前回の記事では「自分にとって新しく有益な情報を、正しく、わかりやすく、楽にノートに落とし込む」ための3つの基本方針を紹介しました。それは次のようなものでした。
- 方針①:「芸術美ではなく構造美を追求する」
- 方針②:「汎用性を重視する」
- 方針③:「楽をするための努力をする」
今回の記事は、その中でも方針①「芸術美ではなく構造美を追求する」と、方針②「汎用性を重視する」にかかわる話になります。
構造的に美しいノートを取るには、基本的な情報の構造について知っておく必要があります。そして、基本的な構造を抑えておけば、様々なところに応用が利くので高い汎用性を持ったノートのとり方を身に着けることができます。
今日はどこにでも存在している基本的な構造、「対」についてご紹介した後、その「対」をどのように表現するかについて書いていきたいと思います。
目次
- 「対」とは?
- 「ことわざ」に見る「対」
- ①「沈黙は金」
- ②「花より団子」
- その他の「対」
- どうやって「対」を表現するか?
- まとめ
「対」とは?
「対」を辞書で調べると次のような意味が記載されています。
二つで一組みとなるもの。(デジタル大辞泉)
二つでセットになっているものって私たちも普段からよく使っていて、とてもなじみ深いと思います。たとえば
昼と夜、平日と休日、陸と海、賛成と反対、文系と理系、理性と感性、大人と子供…
ここに挙げたものはほんの一部に過ぎず、捜そうと思えばもっとたくさんの対が見つかると思います。
「ことわざ」に見る「対」
今回の記事で私がお伝えしたいことの一つは
「対」は普遍的に存在している
ということです。先ほど「対」が私たちにとって非常になじみ深いものであることを感じて欲しいと思い、いくつか例を出しました。しかし私の主張を実感してもらうには、まだ弱いと感じています。
そこで次は、ことわざを例にして話していけたらと思います。
例にことわざを選んだのには、きちんとした理由があります。ヘーゲル哲学の研究者である中井浩一氏は、著書『正しく読み、深く考える日本語論理トレーニング』の中で「生活の中で洗練されて来たことわざは知恵の結晶である」と述べています。
つまり情報の論理構造が洗練されており、かつ誰にとってもなじみ深いことわざは、「対」の普遍性を実感するにはうってつけの教材というわけです。
やや前置きが長くなってしまいました。さっそく具体例を見ていきましょう。
①「沈黙は金」
このことわざは「沈黙を守るほうがすぐれた弁舌よりもまさるというたとえ」(デジタル大辞泉)という意味です。
ここで「対」になっているのは「沈黙」と「金」です。助詞「は」のおかげで、「沈黙」=「金」という関係性を読み取ることができます。
このように「対」どうしがイコールで結べる時、この関係性を「同値」と表現したいと思います。
ここで注意してほしいのは、必ずしも100%同じである必要はないということです。あくまで情報を整理するために、「同値」の関係としてまとめているだけなので、厳密さにこだわる必要はありません。「同じようなことを言っているな」と感じたならば、同値とみなして大丈夫です。
②「花より団子」
このことわざは「風流より実利のほうをとること」(デジタル大辞泉)という意味です。
ここで対になっているのは「花」と「団子」ですね。それらを「より」という格助詞がつないでいます。
この「より」が“比較の基準”を表すので、その前後にある要素(=対)が対立していることが分かります。そこでこのように対立している対同士の関係を、そのまま「対立」と呼びたいと思います。
その他の「対」
先ほど紹介した2種類の「対」、つまり「同値」と「対立」が基本的な「対」だと言えます。その他にも
- 「順接」:前件の内容が後件の妥当な原因になっている(原因→妥当に予測される結果)
- 「逆接」:後件の内容が前件の内容から予想される結果と異なる(原因→妥当に予測されるものとは異なる結果)
- 「演繹」:抽象的な主張から具体例を引き出す(抽象→具体)
- 「帰納」:具体例から抽象的な結論を出す(具体→抽象)
などが「対」関係の一種だと考えられます。
どうやって「対」を表現するか?
ここまでの内容で、私がお伝えしたかった主張:「対は普遍的に存在する」ことを感じていただけたでしょうか?
この普遍的に存在する「対」の概念に基づいて情報を整理することで
方針①:「芸術美ではなく構造美を追求する」と、方針②:「汎用性を重視する」に沿ったノートのとり方を実践することができます。
ということで最後は、いかにして「対」をノートで表現するか?ということについて書いていきたいと思います。
私がおススメしたい方法は
というシンプルなものです。
実はさっきのことわざの例も、このルールに則って図解していました。
「同値なので同じ色で表現」
「対立なので違う色で表現」
わざわざ色を付けるメリットは大きく2つあります。
- ①色を付けることで、対の構造に意識が向く
- ②情報の視認性が格段に上がることです
①については、ノートをとる間に「色を付けよう」という意識で臨むと不思議と「対」に意識が向きやすくなります。結果として「対」の構造に基づいて情報を整理することができるので、内容全体の理解・把握がスムーズになります。
②については、次の図を見て下さい。
これは先ほどの図解と、それをモノクロ処理した図を並べたものです。
どうでしょうか。同じ内容であるにも関わらず、モノクロ処理前の方が見やすいのではないでしょうか?
これは、文字情報は読んでから理解するまでにある程度の時間を要するのに対して、色の情報は瞬時に認知されるからです。さらに情報のまとまりを区別しやすくなる効果も加わって、ノートの視認性は大きく向上します。結果として内容の振り返りを短時間で済ませることができます。
色は何でもいいのですが、私は赤と青を使っています。「赤」はポジティブな要素、「青」はネガティブな要素を表すときに使うことが多いです。
(使い方の例、よければご参考にして下さい)
まとめ
- 「対」:2つで1組のもの。
- 「対」は、普遍的に存在する重要な関係性
- 「対」には「同値」や「対立」などの種類
- 「同値」→同じ色、「対立」→別の色で表現するとよい
いかがだったでしょうか?
次回は「対」と切っても切れない関係にある「媒介」について紹介していきたいと思います。
【参考文献】
・中井浩一「正しく読み、深く考える日本語論理トレーニング」、講談社現代新書(「対」の概念を非常に詳しく解説している名著です。というか、私は「対」について本書を通して学びました。つまり本記事のエッセンスはここからきているといってもいいです。受験を控えた高校生だけではなく、大学生やビジネスの現場で活躍する社会人にも読んでほしい一冊です。)
・鈴木鋭智オフィシャルブログ、「「逆」を表すのは意外と難しい」 (2020/07/22参照)
(今回の記事では「対立」関係を表すのに「⇔」という記号を使っているのですが、実は定義通りの使い方ではないです。なぜこの記号を使っているのか、解説されているので気になる方は参照してみて下さい。)
〈文=早稲田大学 先進理工学部応用化学科 3年 千島 健伸(note)〉
当ライターの前の記事はこちら:ノート大好き人間が語るシリーズ② ~ノートをとる人のための基本方針~
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