前々回の記事では「自分にとって新しく有益な情報を、正しく、わかりやすく、楽にノートに落とし込む」ための3つの基本方針を紹介しました。それは次のようなものでした。
- 方針①:「芸術美ではなく構造美を追求する」
- 方針②:「汎用性を重視する」
- 方針③:「楽をするための努力をする」
前回の記事ではその流れを受けて、方針①と方針②を実践するためには「情報の基本的な構造」を抑えておくことが必要だと書きました。そして最も基本的な情報の関係性である「対」を紹介した後、その「対」をどのように表現するのがよいのかご紹介しました。
今回の記事では、「対」と同じくらい重要な「媒介」という構造について紹介した後、前回と同様に、それをノートの紙上でいかに表現するか?ということについて書いていきます。
目次
- 「媒介」とは?
- 「対」との関係性
- 「媒介」が明示する関係性とは?
- ①「沈黙は金」
- ②「花より団子」
- どうやって「媒介」を表現するか?
- まとめ
「媒介」とは?
「媒介」の意味について考えるために、それぞれの語が持つ意味について考えてみます。
「媒」という漢字を含む単語を挙げてみましょう。
- 「霊媒」:霊と生きている人を仲立ちすること
- 「媒体」:仲立ちするもの
「媒」を含む単語にはこういったものがありますね。
後半の「介」についてはどうでしょうか。
- 「紹介」:人と何かの間に入って取り持つこと
- 「仲介」:人と人との間に入ること
- 「介在」:間に入って存在していること
「媒」と「介」はどちらも「二つのものをつなぐ」というニュアンスを持った語であることが分かると思います。
したがって、それらの語から構成されている「媒介」という単語も同じような意味合いを持っていることを感じていただけると思います。
「対」との関係性
前回の記事では
- 「対」とは二つの情報が一組になっているもの
- 「対」が普遍的な情報の構造であること
ということを書きました。
一見、「対」と「媒介」はバラバラの概念のように感じられますが、実は切っても切れない関係にあります。
その関係は「場所と行き方」にたとえることができます。
例えば、休日を利用してちょっと遠出する時のことを思い浮かべて下さい。
目的地が普段行かないような場所であれば、目的地までのルートを調べると思います。
ここで注目してほしいことが2点あります。
- ①「現在地」と「目的地」が対の関係にある
- ②「現在地」と「目的地」をつなぐものが「ルート」
この2点を抑えて図にまとめると、次のように表せます。
「ルート」が「現在地」と「目的地」の空間的なギャップを埋めて導いていくように、「媒介」は「対」どうし関係性を明示し、つなぐ働きをします。
このように、「媒介」と「対」が密接な関係にあるということを分かっていただけたと思います。
「媒介」が明示する関係性とは?
さっき、「媒介は対どうしの関係性を明示する」と書きましたが、その関係性とはいったいどのようなものがあるのでしょうか?
前回の記事で使ったことわざを例にして考えてみたいと思います。
①「沈黙は金」
ここで対になっているのは「沈黙」と「金」ですね。そしてそれらの関係性を明示してつなぐ「媒介」の役割を果たしているのは助詞「は」です。
この「は」があるおかげで、私たちは「沈黙」と「金」が同値の関係にあることが分かります。
②「花より団子」
ここで対になっているのは「花」と「団子」です。そして、それらを媒介しているのは「より」という格助詞です。
この「より」が“比較の基準”を表すので、その前後にある要素(=対)が対立していることが分かります。
その他にも
- 「なので」:「順接」
- 「しかし」:「逆接」
という語は媒介として働き、情報の関係性を表すことができます。
どうやって「媒介」を表現するか?
最後に、どうやって「媒介」をノートで表現するか?ということについて書いていきたいと思います。
私がおススメしたい方法は
というものです。
媒介は、対どうしを結び付ける時に初めて力を発揮することができます。すなわち媒介単体では具体的な意味を持ちません。そのため非常に見落とされがちな要素です。
そこで蛍光ペンで強調する一手間を加えると、情報の流れを格段につかみやすくなります。
「英語の長文や国語の評論を読むときには、接続詞に印をつけながら読みなさい」とアドバイスされた人は多いのではないでしょうか?やっていることはそれと同じです。
今までに出した図も、媒介はすべてこの方法で表現してきました。
「ことわざ「花より団子」の図解」
「2つの地点をつなぐルートはまさに「媒介」」
色は何でもよいのですが、私は黄色の蛍光ペンを使っています。黄色の蛍光色は、白い紙によく映えるのはもちろん、黒・赤・青ともバランスが良いのでおすすめです。
まとめ
- 「媒介」:対をつなぎ、関係性を明示するもの
- それ自体は意味を持たないが、とても重要
- 目立つように、蛍光ペンなどを使って強調するとよい
いかがだったでしょうか?
「ノート大好き人間が語るシリーズ」もついに第四回まで掲載することができました。ここまでで、方針①:「芸術美ではなく構造美を追求する」と方針②:「汎用性を重視する」を実践するために必要な内容が一通り終了しました。
次回からは、方針③:「楽をするための努力をする」にかかわる内容について書いていきたいと思います。
【参考文献】
・中井浩一「正しく読み、深く考える日本語論理トレーニング」、講談社現代新書(前回に引き続き紹介です。「対」だけでなく「媒介」の概念も本書で学びました。バッティングフォームを体に覚えこませるために何度も素振りをするように「文章を読む型」を身に着けるために繰り返し読んでいただきたい名著です。)
〈文=早稲田大学 先進理工学部応用化学科 3年 千島 健伸(note)〉
当ライターの前の記事はこちら:ノート大好き人間が語るシリーズ③ ~「対」~
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