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学生主体でつくるプロジェクト科目「人間関係とこころの社会学」誕生秘話

目次

  • プロジェクト科目とは?
  • プロジェクト科目「人間関係とこころの社会学」とは?
  • 企画した背景
  • 実際の授業内容
  • 授業を受け終えて
  • 宿命を恐れるな

プロジェクト科目とは?

プロジェクト科目とは、日本大学文理学部の学生が主体となって受けたいと考えた授業を大学側が認可すれば、自分が受けたいと考えた授業を受けることができる制度である。認可があれば、履修後に総合教育科目として2単位が与えられる。プロジェクト科目を認可してもらうためには、6つのステップがある。

  1. 自分で企画したい授業の内容を考える。
  2. 自分の企画した授業を担当してくれそうな先生を探す。
  3. 担当の先生と授業の時限、授業方法、教室の広さ等について相談し、了承を得る。
  4. 企画授業に賛同する学生20人の署名、電話番号を集める。
  5. 所属する学科の一番偉い先生(学務委員)から承認を得る。
  6. 教務課の審査、承認を得る。→無事開講!

といった流れで企画授業はつくられる。さらに、学部内に幹事を担当して下さる先生がいらっしゃれば、外部の先生を招待し、授業を行ってもらうこともできる。もちろん担当の先生の給料は大学側が支払う。

プロジェクト科目「人間関係とこころの社会学」とは?


プロジェクト科目について説明したところで、実際に筆者が1年生の頃に企画し、プロジェクト科目として認可を頂いた、「人間関係とこころの社会学」という授業について説明したいと思う。この授業では、近年、若者の「生きづらさ」を社会学的視点からとらえ、身近な「生きづらい」と思う現象を社会学的に理解すると同時に、学生間のディスカッションを通して他の受講生の多様な考えに触れ、視野を広げることを目的とする授業であった。この授業は20名の受講生で構成され、一般の学生が普段関わりが少ないスポーツ推薦で入学した学生や、中国からの留学生など個性豊かな学生が集まった。発言が飛び交い、出席率は非常に良く、日本大学が掲げる「自主創造」の理念にふさわしい授業となった。

日本大学文理学部シラバス総合教育科目 人間関係とこころの社会学


企画した背景


人間関係とこころの社会学を企画した背景には、私が高校で野球部に所属していた時に味わったイップス(投球障害)の経験と、同期に投げかけられた言葉がこの企画授業を作りたいと考えた大きなきっかけになった。まずイップスの経験談からお話ししようと思う。
 野球部の練習には「トスバッティング」という練習方法があった。投球側と打撃側の1対1に分かれ投球側は相手が打ち返しやすいところに投げ、打撃側は投球側が取りやすいよう正面にワンバウンドで打ち返す…といった具合で打撃側のバットコントロールを上げることを目的とした練習方法だ。(この練習方法については賛否両論あるが。)当時投げ手であった私は打ちやすいところに投げよう投げようとするあまり、大きく制球を乱し、打撃側の打てる範囲のボールを投げれなくなった。当時の私は小学生でもできるコントロールができなかった。しばらくの間、私はイップスであることをあの手この手で隠していたが、それを見かねた友人がイップスを直すために練習に付き合ってくれた。その友人のおかげでイップスは完全とまではいかなかったが少し改善することができた。
 その後、レギュラーの同期から投げかけられた「お前がコントロールが悪い事で悩んでいるのはそれだけ全力だからだよ、俺は嫌なことは避けているけど、お前は何事に対しても全力だ。スゲーよお前。」という言葉だ。この言葉を聞くまで自分はイップスである自分のことにコンプレックスしかもっていなかったが、この言葉を聞いて、自分が不器用ながらも全力で野球をやっていることに気づくことができ、自分の中でイップスである自分のことを好きになることができた。
 このトスバッティングと、レギュラーの仲間の一言から、自分の悩みを話す場所があれば良い。そして、他の人の価値観を知る機会がある授業があればいいなと強く感じるようになり、大学で学生主体で授業をつくることができると知った瞬間、期限があと8日間だったのにも関わらず、担当講師の先生、署名を快く引き受けてくれた同級生、企画を手伝ってくれた先輩方のおかげもあり無事「人間関係とこころの社会学」は教務課の審査を通り、翌年シラバスに記載された。

実際の授業内容


授業内容は、男女の心理の違いについてや、家族の問題、自信のなさなど多岐にわたった。受講生一人ひとりが色々な悩み・コンプレックスを持っていて、自分が抱えている問題を他人に聞いて貰えるだけでなく、様々な意見を知ることができた。企画して本当に良かったと感じた授業であった。

授業を受け終えて


授業を通じて知り合った学生から授業後、連絡があった。そこにはこの授業をつくってくれたことのお礼が長文で記されていた。そこで私のイップスという負の側面しかなかったものが、企画授業着想のきっかけとなり、一人の人間のこころの支えになることができたのだと自分を誇りに思うことができた。

宿命を恐れるな


この授業を来年も行いたいと考えた私は、今年もプロジェクト科目の応募をすることにした。このままのテーマで行こうか、それともここの部分は変えてみようか。色々と考えるのだが、前と変わったことは人から意見を貰ったり、話を聞いて貰う機会が増えたことだ。イップスは人間関係とこころの社会学という授業を通じて、自分を変えるきっかけになった。イップスという挫折の経験は自分を変えてくれるための宿命だったかもしれない。
 もし今、タイムスリップして高校時代の自分に会えるとしたらきっとこう言うだろう。

「宿命を恐れるな。」と。

<文=末田椋資

当ライターの前の記事はこちら:市役所前の裸体像の謎

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