勉強法

ゲームが問題解決に貢献する?

目次

  1. 話題のGamificationとは?
  2. なぜゲームが問題解決に貢献するのか?①よく整理された問題
  3. なぜゲームが問題解決に貢献するのか?②心地よいもどかしさ
  4. なぜゲームが問題解決に貢献するのか?③専門知識のサイクル

1.話題のGamificationとは?

近年、Gamification(ゲーム化)が、産業界(Kim 2008)とアカデミア(Hamari 2014)の両方で注目を集めている。アカデミアの文脈では、ゲーム化された学習介入は、生徒のエンゲージメントを高め、学習を強化する可能性があるとされている(Buckley, P., & Doyle, E. 2016) 。Huotari(2017)は、ゲーミフィケーションの定義として、その体験性を強調したものを提案している。この定義では、ゲーミフィケーションの4つの重要な側面、すなわち、アフォーダンス、心理的仲介者、ゲーミフィケーションの目標、ゲーミフィケーションの文脈を強調している。この定義を使って、ゲーミフィケーションを行う4つのアクターを特定し、サービス環境のコミュニケーション的演出としてのゲーミフィケーションについて考察している。また、ゲーミフィケーションは、ゴールとその関連性を示し、ユーザーを誘導経路に誘導し、ユーザーに即座にフィードバックを与え、優れたパフォーマンスを強化し、コンテンツを管理しやすいタスクに単純化することができる。ゲーミフィケーションの仕組みは、ユーザーが個々の目標を追求し、さまざまな進歩の道筋を選択できるようにし、システムはユーザーの能力に複雑さを適応させることができる。そして、ソーシャルゲーミフィケーションの要素は、社会的な比較を可能にし、ユーザーを相互にサポートし、共通の目標に向かって努力するよう結びつけることができる(Krath 2017)。

2.なぜゲームが問題解決に貢献するのか?①よく整理された問題

本稿では、ゲームが問題解決にどのように貢献するのか説明するゲームが問題解決に貢献する理由は大きく分けて7つ存在する。本稿では、3つ紹介し、次の記事で残りを紹介する。  第一に、よく整理された問題(well-ordered Problems)である。学習者が早い段階で自由すぎる問題や複雑すぎる問題に直面した場合、その問題をどのように解決するかについて、創造的な仮説を立てることが多い。しかしそのような仮説は、難しい問題はもちろんのこと、簡単な問題でさえもうまく機能しない。学習者が初期に直面する問題は非常に重要であり、学習者が仮説を立てられるようにうまく設計する必要がある。よって「学習者を豊かな環境に解放すれば、あとは勝手に学習が始まる」「教師は必要ない」と考えるのは危険である。ガイダンスがなければ、学習者は(創造的ではあるものの)偽りのパターンを見つけ、その罠にとらわれるだけである。多くの人を魅了するゲームは、「いまなにをするべきなのか」を段階的に提示していく。「主人公はいまどういう状況に置かれているのか」「解決するべき課題は何なのか」といった大枠の説明から、「どういうふうにプレーすればよいのか」「次にどんなアクションを取るべきなのか」といった技術的なところまで、適切な情報量でプレイヤーを導く。そうすることで、プレイヤーは徐々に自分の力で問題を解決できるようになる。

3.なぜゲームが問題解決に貢献するのか?②心地よいもどかしさ

第二に、心地よいもどかしさ(Pleasantly Frustrating)である。具体的に言うと、学習が最も効果的に機能するのは、新しいチャレンジが心地よいフラストレーションを感じさせるときである。それは「能力の範囲」の外側にありながら、「自分ならできる」と感じられるものである。大事なのは、「自分の努力が報われている」と感じられること、その証拠を得ることができることだ。良いゲームをしているとき、「いつ終わるのか」「他の人と比べてどうだったのか」といったことは問題にならない。プレイヤーの関心は、あくまでそのゲームを学び、マスターすることにある。具体的に言うと、ゲームをすることは、すなわち失敗をするということでもある。初見のゲームをノーミスでクリアすることは非常に難しく、多くの場合は何度も失敗を繰り返しながら、徐々にゲームシステムや物語を学んでいく。このとき、「なぜ失敗したのか」をうまくフィードバックするゲームは、それだけでプレイヤーを惹きつける。「こうすれば問題はクリアできる」ことを示すことで、「あとは○○さえできれば」という心地よいもどかしさをプレイヤーに与えるからである。

4.なぜゲームが問題解決に貢献するのか?③専門知識のサイクル

第三に、専門知識のサイクル(Cycles of Expertise)である。専門知識は、学習者がスキルをほぼ自動的に使えるようになるまで練習しつづけることで、どの分野でも形成される。スキルが身についたかどうかの確認は、ゲームにおいてはレベルアップやボスの討伐というかたちで表現される。そして新たなレベルやステージに進むことで、また同じサイクルが繰り返されるデザインになっている。ゲームは学習者に専門的なスキルを体験させるが、学校では通常そうなってはいない。専門知識を学ぶサイクルによって、学習者は学習を管理する方法を学び、「学ぶことを学ぶ」ことに熟練できるようになる。また、練習と新しい学習の間、習得と挑戦の間にリズムとフローが生まれとされている。ゲームは反復のメディアであり、繰り返し行動することによって、プレイヤーはやがて自然とその行動を取れるようになる。「ファイナルファンタジー」などの日本を代表するRPGは、まさに反復的な学習をゲームシステムに組み込んでおり、一見すると複雑に見えるアクションについても、やがてスムーズに実行できるようにデザインされていると言える。

【参考文献等】

Buckley, P., & Doyle, E. (2016). Gamification and student motivation. Interactive learning environments24(6), 1162-1175.

Gee, J. P. (2005). Learning by Design: Good Video Games as Learning Machines. E-Learning and Digital Media, 2(1), 5–16. https://doi.org/10.2304/elea.2005.2.1.5

Kim, A. J. (2008). Putting the fun in functional: applying game mechanics to functional software. http://www.slideshare.net/amyjokim/putting-the-fun-in-functiona?type=powerpoint. Accessed 13 Dec 2013.

Krath, J., Schürmann, L., & Von Korflesch, H. F. (2021). Revealing the theoretical basis of gamification: A systematic review and analysis of theory in research on gamification, serious games and game-based learning. Computers in Human Behavior125, 106963.

Hamari, J., Koivisto, J., & Pakkanen, T. (2014a). Do persuasive technologies persuade? – A review of empirical studies. In A. Spagnolli et al. (Eds.), Persuasive TechnologyLNCS (vol. 8462, pp. 118–136). Springer International Publishing Switzerland.

Huotari, K., & Hamari, J. (2017). A definition for gamification: anchoring gamification in the service marketing literature. Electronic markets27(1), 21-31.

教育のスゴい論文 なぜゲームが学習を促進するのか?(2)問題解決編

https://note.com/sugo_ron/n/ne59d1ca2e7dc

<文=末田椋資>

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