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高麗大学で行われたCampus Asia Plus Symposiumでの経験

目次

  1. 高麗大学でCampus Asia Plus Symposiumが開催される
  2. ラオスの初等教育における教員の質が児童のテストの点数に与える影響
  3. 懇親会

1.高麗大学でCampus Asia Plus Symposiumが開催される

2024年11月8日(金)に韓国の高麗大学にてCampus Asia Plus Symposiumが開催されました。本シンポジアムには高麗大学の教授と学生だけでなく、中国の復旦大学、日本の神戸大学、ラオスからラオス国立大学の教授と学生が参加されました。学生の発表者は、リスクマネジメントに関わる各自の研究内容について15分間のプレゼンテーションを行い、その後、高麗、復旦、神戸大学の教授のうち2名がコメンテーターとしてそれぞれの発表に対するコメントをくださりました。リサーチデザインにまつわるアドバイスから、新たな視点の提供、手法に対するアドバイスを頂きました。神戸大学からの発表者として、私もプレゼンをする機会を頂きました。私の発表内容は、「ラオスの初等教育における教員の質が児童のテストの点数に与える影響」について発表しました。本稿では発表内容について簡単に説明させて頂きます。

2.ラオスの初等教育における教員の質が児童のテストの点数に与える影響

世界銀行は2019年、学校に行っているけど学んでいない問題のことをLearning Poverty(学習貧困)と定義し、世界の低・中所得にある10歳児の60%が学習貧困の状態にあるとし、教育の質の改善を訴えました。学習貧困の具体例を挙げると、ケニア、タンザニア、ウガンダにおいて、「The  name of the dog is the puppy(その犬の名前はPuppyです)」という簡単な文章を75%の学生が読めなかったという驚きの研究結果を上げています(世界銀行, 2017)。

ラオスは学習貧困の問題に直面している国の一つです。ほとんどのラオスの生徒は、初等教育終了時に子どもたちに期待される基本的な読解力と計算力を身につけていません。5年生で最低限の読解力を身につけた生徒はわずか2%、5年生で最低限の数学的能力を身につけた生徒はわずか8%です(UNICEF,2020)。この結果は、同じ調査に参加した、カンボジア、ベトナム、シンガポール、ミャンマー、フィリピンと比べて最も低いスコアでした。

図1:初等教育レベルにおける基本的な読みと数学

世界銀行は、より高い学習成果を得るためには教師が最も重要な要素であるとしています。Hanushek教授の研究によると、良い教師は1年間で1.5年の教育成果をあげる一方、質の低い教師は1年間で0.5年の教育成果をもたらすとしています。また、教師は子どもの遺伝や家庭の資源を超えた問題に対処する可能性があると主張しています(Hanushek, 2011)。 教師が児童のテストスコアを改善する最も大事な要因にも関わらず、ラオスの教師は教えている内容の半分も理解をしていないという衝撃的な結果が出ています。具体的には、図2にあるように、数学の平均点は49%、ラオス語の平均点は80%を超える必要があるにもかかわらず51%です(世界銀行,2018)。

図2: 初等教育4年生の教員がカリキュラムの内容を理解している割合 

引用:世界銀行(2018)

また、表1にもあるように、世界銀行が推奨する理解度である80%を満たす教師はかなり少ない。数学はわずか8.2%の教師、ラオス語はわずか3%の教師、教授法で基準を満たしている教師はわずか1.8%である(世界銀行,2018)。

教科世界銀行の基準に到達する教師の割合
数学8.2%
ラオ語3%
教授法1.8%

表1:世界銀行が推奨する基準に達している教師の割合

教師の質を改善するには教員訓練が効果的とされています。Zeng (2023)は、教師研修への継続的な参加は、生徒の学習成果の向上に貢献するとし、Yoon(2007)は14時間以上の専門能力開発が行われた研究では、専門能力開発が生徒の学業成績にプラスの有意な効果を示したとしているといった研究結果を出しています。

分析結果からは、教員訓練はラオスの児童のテストの点数に有意に正の影響を与えることが確認できました。一方で、パソコンが児童のテストの点数に負の影響を与える結果が出ており、これは教師がパソコンを効果的に使えていないことに加え、パソコンを立ち上げることに資源を使ってしまい、授業準備が疎かになっている可能性が示唆されました。

最後に提案として、ラオスにおいて、教授経験が5年未満あるいは50歳以上は教員訓練に参加できない。また、参加できたとしても教師が訓練の費用を払う必要があるため教員訓練を受けるインセンティブが低いことを示し、教員訓練の年齢制限を撤廃することと、教員訓練の無償化を提案しました。

3.懇親会

Campus Asia Plus Symposiumでの発表後、懇親会に参加しました。懇親会には日中韓の学生だけでなく、ポーランド、フランス、ドイツからの留学生も参加しました。会話では、将来の夢や国際機関の役割や課題、様々な社会問題に対するそれぞれの国の立場について英語でディスカッションを行いました。将来の夢の話の中では、政府系銀行で働きたい、教授になりたい、政治家になってふるさとの発展に貢献したいなど自身のビジョンを語り合いました。

2025年のCampus Asia Plus Symposiumはラオス🇱🇦で行われる予定です。

<文=末田椋資>

当ライターの前の記事はこちら:UNDPキャリアセッション :国連職員の経験から学んだこと

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