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【仕事紹介】【就活生必見】滞納整理業務とは?事務系公務員を目指す方へ 

今回は、滞納整理の仕事について解説します。「滞納整理業務」と聞いてもピンと来ない方が大半ではないでしょうか。滞納整理は、国や自治体で行われていますが、事務系の公務員等を目指すのであれば知っておきたい業務の1つです。

まずは滞納整理の仕事がどんなものなのか確認しましょう。

目次

  1. 滞納整理とは? 
  2. 徴収手続き
  3. 差押え(さしおさえ)とは
  4. 滞納整理は難しい?仕事に必要な能力
  5. 滞納整理のやりがい

1.滞納整理とは?

滞納整理業務をわかりやすく言うと、「滞納者から税金・保険料を徴収する一連の仕事」です。

税金や保険料には「納期限」というものが定められています。大半は納期限内に納付されますが、納期限までに納付されず、滞納者となるケースがあります。この場合に滞納整理業務を進めることになります。

滞納整理の主な業務は、滞納案件を精査して滞納金を回収することです。具体的な方法には、滞納者との折衝(話し合い)や、滞納処分(差押え)が挙げられます。徴収職員(担当者)は、国税徴収法と国税通則法という法律を基に業務を進めます。

※滞納整理は、債権回収と呼ばれることがあります。債権は、公債権と私債権に分類されますが、 今回は公債権のうち強制徴収公債権に絞って解説します。強制徴収公債権は、法律の規定で滞納処分(差押え)が可能な債権ですが、誰でも滞納処分ができるわけではありません。徴収職員又は徴税吏員としての資格がある者に限られます。例えば、厚生年金保険料の徴収は日本年金機構の徴収職員が担当しますが、厚生労働大臣の認可を受けて日本年金機構理事長が任命することとしています。

2.徴収手続き

徴収手続きには、以下の7つのステップがあります。国の機関や各自治体で多少の違いがあるかもしれませんが、大まかな流れは同じです。

  •  納期限経過
  •  督促
  •  催告
  •  財産調査
  •  差押え(滞納処分)
  •  換価・配当
  •  完納or欠損

第一に、税金や保険料が期限までに納付されなければ、督促が行われます。一般的には督促状の送付により、督促を行います。また督促には期限が設けられています(督促状の指定期限)。

督促状の指定期限までに納付がなければ、次の段階に入ります。それが催告ですが、文書や訪問の手段で行います。滞納者と話し合うわけですが、話し合ってもまとまらなければ、強制執行する段階に入ります。

強制執行、それが滞納処分です。財産を調査して見つかれば差押えを執行します。財産には多くの種類がありますが、銀行の預金をイメージするといいでしょう。

差押えをした財産を滞納した税金や保険料に充てる手続きをとります。これを換価・配当といいます。差押えした分が滞納金に満たない場合、差押えを繰り返すか、再度話し合うことになります。

また、財産がなく徴収が見込まれない場合は、会計上の欠損処理をすることになります。欠損とは、滞納金の扱いから無くすこと、つまり滞納整理の対象から外れることを意味します。

このように、滞納整理の仕事の目的地は2つしかありません。「完納させる(滞納解消となること)」「欠損すること」です。

3.差押え(さしおさえ)とは

差押えとは、債務者(支払い義務がある人)の財産(預貯金、家や土地、自動車など)の処分を禁止して、裁判所の命令によって行われます。借金取りが来て、家から金目の物を持ち出すのをイメージするかもしれません。

税金や保険料(公租公課ともいう)における差押えは少し違います。徴収職員は裁判所の命令なしで差押えをすることができます。これを自力執行権といいます。

また、財産の差押えを現場で執行することはあまりありません。多くの場合は書面によって行われます。差押えをする財産は、預貯金や売掛金、不動産や自動車があります。

差押えした後の換価手続き(お金に換えること)には、インターネット公売による方法もあります。

産経ニュース 差し押さえたフェラーリ、約1億7100万円で落札 国税ネット公売で最高額https://www.sankei.com/article/20241115-N26XKFLLOFL3RLLKKLYN5UTQL4/

では、差押えの根拠となる法律を確認します。

(差押の要件)
第四十七条 次の各号の一に該当するときは、徴収職員は、滞納者の国税につきその財産を差し押えなければならない。
一 滞納者が督促を受け、その督促に係る国税をその督促状を発した日から起算して十日を経過した日までに完納しないとき。
二 納税者が国税通則法第三十七条第一項各号(督促)に掲げる国税をその納期限(繰上請求がされた国税については、当該請求に係る期限)までに完納しないとき。
2 国税の納期限後前項第一号に規定する十日を経過した日までに、督促を受けた滞納者につき国税通則法第三十八条第一項各号(繰上請求)の一に該当する事実が生じたときは、徴収職員は、直ちにその財産を差し押えることができる。
3 第二次納税義務者又は保証人について第一項の規定を適用する場合には、同項中「督促状」とあるのは、「納付催告書」とする。

e-GOV 法令検索 国税徴収法

このように、差押えの要件は国税徴収法に定められています。簡単に言うと、「期限までに納付しないなら、財産を差押えしないといけない」ということです。

4. 滞納整理は難しい?仕事に必要な能力

財産の差押えは、滞納整理業務における醍醐味の一つですが、滞納者とトラブルになるケースが度々あります。自分の財産が差押えられることになるので、動揺するのも仕方がないことです。怒鳴ったり、執拗に抗議をする滞納者もいますが、どんな相手に対しても毅然とした対応が求められます。

また滞納者の中には「生活に困窮しており、納付資力がない」という方もいますが、そういった滞納者と折衝・交渉をするのが滞納整理の仕事です。滞納の事実に基づき、納付を求めて交渉していかなければなりません(事情に配慮する必要もあります)。

滞納整理に必要な能力は何か?私見ですが、滞納整理の仕事には、精神力、交渉力、瞬発力の3つが必要です。滞納者からのクレームに動じず、主導権を握って交渉し、集中的に取り組むことが求められます。いずれも、業務を経験する中で自然と身についていくものですが、ある一定の経験が必要です。また、滞納整理で身につけた能力は、必ず他の業務でも生きてくるはずです。

5. 滞納整理のやりがい

滞納整理のやりがいは、仕事の成果が数字に表れやすいことです。公的機関の仕事で、これほど仕事が数字に直結する仕事はありません。滞納者と折衝する中で、うまく交渉をまとめたときや、滞納金を自分の力で徴収できたときに喜びを感じるでしょう。

私の周りで「徴収ほどやりがいのある仕事はない」という意見がある一方、「お金を取らないといけないから苦しい仕事だ」という意見もあります。

これから就活を始める方は、自己分析をして自分自身の適正を考えていくことが大切です。どんな組織、仕事であってもやってみなければわかりません。今回は滞納整理の仕事を紹介しましたが、事務系の公務員を志望しているなら、知っておきたいところです。皆さんの業界研究の助けになれば幸いです。

参考

国税庁 https://www.nta.go.jp/about/organization/ntc/kenkyu/ronsou/57/01/hajimeni.htm

<文=森 寛衆>

当ライターの前の記事はこちら:会社を辞めたらどんなお金がもらえるの?知っておきたい失業給付のはなし

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