日本に住む20歳以上60歳未満の方は、原則として「国民年金」に加入します。会社員や公務員として働いている方は「厚生年金」にも加入して、基礎年金と厚生年金を受け取ることができます。しかし、第1号被保険者(個人事業主やフリーランスの方)は「国民年金」のみの加入となり、将来受け取る年金額が低くなりがちです。今回は、国民年金の第1号被保険者の方向けに、上乗せ給付制度について解説します。将来の年金額を増やしたいと考えている方にとって、有力な選択肢です。
目次
- 上乗せ給付とは?
- 付加年金制度
- 国民年金基金
- 上乗せ給付の役割
- まとめ
1.上乗せ給付とは?
国民年金制度に10年加入し、保険料を納めていた方は、原則65歳から基礎年金を受給することができます。上乗せ給付とは、基礎年金に追加して受け取ることのできる年金制度のことです。国民年金第1号被保険者(自営業・フリーランス・無職の方)や65歳未満の任意加入被保険者を対象にしています。
2. 付加年金制度
付加年金とは、毎月の国民年金保険料にプラスして月額400円を納めることで、将来の年金に上乗せがある制度です。
「200円 × 納付月数」という形で、老齢基礎年金に上乗せして受け取ることができます。
(例)国民年金保険料を満額(40年=480か月)納付した場合、年金は200円×480か月=年96,000円(月8,000円)の上乗せ。
月400円の追加負担で、将来的に年96,000円を受け取れる計算となるため、一定期間受給を続けることで負担を上回る可能性があります。
注意点
以下の方は付加保険料を納めることができません。
- 国民年金保険料の納付を免除されている方
(法定免除、全額免除、一部免除、納付猶予、または学生納付特例) - 国民年金基金の加入員である方
3. 国民年金基金
国民年金基金は、認可を受けた公法人で、「全国国民年金基金」と「職能型国民年金基金」に分類されます。国民年金基金の加入者は、毎月の掛金を支払うことで、将来の年金額を増やすことができます。
国民年金基金の主な特徴
- 掛金の上限:月額68,000円まで
- 掛金は全額が社会保険料控除の対象となり、節税効果が期待できる
- 年金受給前に死亡した場合は、遺族に一時金が支給される制度がある
- 付加年金との併用は不可
- 加入には、国民年金保険料を滞納していないことが条件
自分で金額とプランを設定できるため、将来の年金額に備えたい方にとって、有力な選択肢となります。
項目 | 付加年金 | 国民年金基金 |
---|---|---|
対象者 | 第1号被保険者 | 第1号被保険者 |
月額負担 | 一律400円 | 任意(上限68,000円まで) |
上乗せ金額 | 200円 × 納付月数 | 選択したプランによって異なる |
制度の特徴 | 保険料の負担が少ない | 終身年金・有期年金など柔軟にプランを選択できる |
向いている人 | 少額から年金を増やしたい方 | 現時点で資金に余裕があり、老後資金を準備したい方 |
4. 上乗せ給付の役割
厚生年金の受給者は、基礎年金に加えて報酬比例部分も上乗せされるため、年金額が月15万円前後になるケースもあります。一方で、国民年金のみに加入している方や、厚生年金の加入期間が短い方は、受給額が低くなる傾向があります(令和7年度の老齢基礎年金の満額は年額831,700円)。
基礎年金の受給だけでは、老後の生活費をすべてカバーするのは難しいと言われています。自分自身で選べる「上乗せ制度」は、老後資金の備えとして重要です。
しかし、毎月の保険料に加えて支出が増えることにもなるため、無理のない範囲で加入することが大切です。付加年金のように手軽なものから始めてみたり、将来のライフプランを見据えて国民年金基金を設計していくのも良いでしょう。
5.まとめ
年金の上乗せ制度は、任意で選択できる老後の年金対策です。会社員に比べて年金額が低くなりがちな第1号被保険者にとっては、こうした制度への理解を深めることが、老後の生活の安心につながります。
付加年金は月400円という少額から始められる制度、国民年金基金は自分でプランを選択する自由度の高い年金制度。生活スタイルや将来設計に合わせて、適切な方法を選んでみてはいかがでしょうか。
<文=森 寛衆>
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