社会保険

離婚時の年金分割とは?制度の仕組みや注意点を解説

離婚時の年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金の納付記録を分割する制度です。年金分割は、離婚をしたら自動的に行われるのではなく、請求が必要です。本記事では、制度の概要から手続きの流れ、注意点までわかりやすく解説します。

目次

  1. 年金分割とは?
  2. 年金分割には2種類ある
  3. 手続きの流れ
  4. まとめ

1. 年金分割とは?

年金分割とは、離婚時に婚姻期間中の厚生年金の納付記録を、配偶者と分け合うことができる制度です。

分割されるのは「年金の給付額」ではなく、「標準報酬記録」です。標準報酬記録を分割した結果、将来受け取る年金の額が増減します。

2. 年金分割には2種類ある

離婚時の年金分割には、以下の2種類があります。

  • 合意分割:平成19年4月施行
  • 3号分割:平成20年4月施行

① 合意分割

離婚時に、夫婦間で合意(または家庭裁判所の決定)により、標準報酬の改定を請求できる制度です。

◆ 合意分割の要件

  • 婚姻期間中に厚生年金記録があること
  • 夫婦間で按分割合に合意していること
    (または家庭裁判所が按分割合を定めていること)
  • 請求期限:離婚等をした日の翌日から2年以内

◆ 按分割合の決め方

按分割合は当事者間の合意、または家庭裁判所の決定により定められます。

按分割合の算出式:
按分割合 = 第2号改定者の標準報酬総額 ÷ 当事者の標準報酬総額の合計額

※第2号改定者とは、標準報酬の少ない方(一般的に妻)。第1号改定者はその配偶者。

◆ 按分割合の例

(例)夫の報酬が7,000万円、妻が3,000万円の場合:

  • 合計:1億円
  • 按分割合 30%を超え、50%以下で設定
  • 妻の持分40%で合意した場合、夫6,000万円、妻4,000万円となる

② 3号分割

3号分割は、国民年金第3号被保険者期間について、配偶者の厚生年金記録を2分の1ずつ分割する制度です。被扶養配偶者を有する厚生年⾦保険の被保険者が負担した保険料については、夫婦が共同して負担したものであるという考えに基づいています。

◆ 3号分割の要件

  • 婚姻期間中に国民年金第3号被保険者期間がある
  • その期間に厚生年金記録がある
  • 請求期限:離婚等をした日の翌日から2年以内

◆ 合意分割との違い

  • 合意分割:夫婦の合意が必要。婚姻期間すべてが対象。
  • 3号分割:合意不要。平成20年4月以降が対象。

合意分割と3号分割の大きな違いは、合意分割は夫婦間の合意が必要で、婚姻期間全体が年金記録の対象となる点です。一方で、3号分割は夫婦の合意は不要で、平成20年4月以降の年金記録が対象となります。

3.手続きの流れ

年金分割の手続きは、一般的には次の流れで行います。

  1. 情報取得
    まず、日本年金機構に「年金分割のための情報提供請求書」を請求します。離婚前でも離婚後でも、夫婦どちらか一方でも請求できます。請求すると、当事者双方又は一方に「年金分割のための情報通知書」が交付されます。
  2. 夫婦間で合意 or 裁判所に申立て(合意分割のみ)
    合意分割の場合は、按分割合を話し合って決めます。合意できない場合は家庭裁判所に申立てを行います。
  3. 年金事務所へ請求手続き
    標準報酬改定請求書で請求手続きを行います。合意分割の場合は、年金分割の合意書が必要です。添付書類を揃えて、年金事務所に請求をします。
  4. 審査後、年金記録に反映
    審査終了後、標準報酬記録が決定又は改定され、年金記録に反映されます。

年金分割で注意すべきポイント

  • 請求期限は離婚から2年以内!
     原則離婚から2年を過ぎると手続きができません。ただし、2年経過する前に調停や審判の手続きを行った場合は、調停の成立日または審判の確定日の翌日から6ヶ月を過ぎるまで年金分割を請求することができます。なお、元配偶者が死亡してしまうと、死亡から1ヶ月以内に手続きを行う必要があります。

4. まとめ

離婚時の年金分割は、収入に格差があった夫婦にとって、老後の生活を大きく左右する重要な制度です。最大のポイントは、請求期限2年を超えると請求できないという点です。離婚を考えたときは、将来の生活設計も見据えて手続きすることが大切です。わからないことがあれば、年金事務所に相談しましょう。

<文=森 寛衆>

当ライターの前の記事はこちら:脱退一時金制度の問題点と制度改正の動き

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