「頑張る」「頑張れ」ーーー
これらは、皆さんが日常的に使用している言葉ではないでしょうか。人を励ましたいという思いを込めて「頑張れ・頑張りなさい」と言う場面があります。しかし、この言葉は本当に人を励ますのでしょうか。今回は、「頑張る」「頑張れ」という言葉の背景をひも解きながら、本当の意味とより効果的な言葉の使い方を考察します。
※本記事で気を悪くする方がいるかもしれませんが、私は「頑張る」「頑張れ」という言葉を使う人を否定したいわけではありません。場面やその人の状況によっては適切でない場合がある、ということをお伝えしたいと思います。
目次
- 「頑張る」の語源
- 「頑張れ」の違和感
- 無理を重ねた「頑張り」は長続きしない
- 「頑張れ」よりも力になる言葉
1. 「頑張る」の語源
「頑張る」の語源には2つの説があります。
- 眼張る … 一定の場所から動かず踏ん張ること
- 我を張る … 自分の考えを押し通すこと
現在は語源から転じて、「困難に耐えて、我慢すること」として使われています。世間一般に広く使われている言葉ではあるものの、他者に対して使う場面では合わない言葉かもしれません。
2. 「頑張れ」の違和感
日本では、人を励ましたい時に、「頑張れ」「頑張りましょう」という言葉がよく使われます。
「頑張る」の本来の意味から言えば、自ら「頑張る」人は賞賛されるべきです。しかし、他者から発せられる「頑張れ」では、「困難があっても我慢してやれ」と言っていることになるのではないでしょうか。
幼少期から繰り返し「頑張れ」と言われるなかで、心の中ではこう思っていました。
- 「これ以上どう頑張れって言うの?」
- 「頑張れば解決する問題?」
人は「頑張れば何とかなる」「最後まであきらめるな」と言います。誰でもがんばれば、目標が達成できるような気がしてきます。ですが、実際そんなことはあまり多くありません。頑張れば何でもできると思うのは幻想です。「頑張れ」という言葉は、相手に無理を強いる傲慢な言葉にもなり得ます。
3. 無理を重ねた「頑張り」は長続きしない
「頑張る」と「自発的な努力」には明確な違いがあります。
自発的な努力は「無理をする」ということがなく、自分の意思で力を尽くしたいと考えるものです。もちろん、努力にも一定の忍耐が必要なのは言うまでもありません。忍耐も困難に対して耐えることを指しますが、自らが困難に向かうことを選んでいます。忍耐は自分が進んで困難に向かっているので、長期間続けることが可能です。反対に、「無理して頑張ること」や「我慢」は、長続きしません。
日本では、我慢することが美徳とされ、「頑張ること」が良しとされる風潮があります。その結果、他人に頑張ることを強要する傾向もあるのです。
また、海外には「頑張る」に相当する言葉や概念が存在しないこともあり、日本独特の文化を象徴していると言えるでしょう。タイやカンボジアでボランティア活動をしていた方の興味深い話があります。現地の人に「頑張って」と伝えようにも、それに相当する言葉がないため伝わらないそうです。「頑張る」という概念・感性を持ち合わせていないのです。では、その国の人たちは、努力することも、困難に耐えたこともないかというと、そうではありません。
日本語における「頑張る」の本質とは….” 無理をすること “と言えるのではないでしょうか。
4.「頑張れ」よりも力になる言葉
「頑張れ」という言葉は、すでに限界を迎えている人には逆効果になることがあります。「頑張れ」という言葉は、目標に対して強い意志を持つ人に対して通用します。しかし、「頑張れ」と使っているのは、そうでないことが多いです。
「これ以上頑張れない」と言った人に対して、” 頑張れ ” と言う。
これは、すでに限界の人に対して安易に投げかけられ、心を追い詰めてしまう危険があります。心のキャパは人によって違いますし、すでに頑張っている人に無理を強いると、簡単に心が折れます。この言葉を使う人は、「頑張ったことによる成功体験がある人」や「自身が頑張ることが好きな人」である傾向が強いのかもしれません。
他人を応援したいときに使う言葉であれば、その人がすでに努力していることを前提に考えて言葉を伝えるべきです。誰かの背中を押す時は、無理をさせるのではなく、「応援している!」と言うと効果的でしょう。もちろん、目標を達成したときに「よく頑張った」と伝えることは素晴らしいことだと思います。
冒頭でもお伝えした通り、私は、「頑張れ」という言葉を使う人がよくないと言っているのではなく、場面や状況、相手によっては危険な言葉となり得るということです。だからこそ、相手の心の状態をしっかりと見極めることが大切です。そして言葉の小さな違和感に気づくことができれば、より効果的な声掛けができることとなるでしょう。
(参考)
考える人.”16. 努力の方向性について――我慢や無理は「頑張る」ではない” https://kangaeruhito.jp/article/760812
note.”「 頑張る 」 という言葉の “違和感” と “本来の意味”” https://note.com/mk12345/n/nfdcf7b73ff83#733a3914-8108-4f3a-9fed-3e0a214b012a
note.”「頑張る」とは疲弊して追い込むことではない” https://note.com/nambokut/n/nac92d1ae42b5
<文=森 寛衆>
当ライターの前の記事はこちら:後期高齢者医療制度と法改正について
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