目次
- 財政検証とは?
- 所得代替率とは?
- 財政検証の意義
- 2024年財政検証結果の概要
- まとめ
1.財政検証とは?
財政検証とは、日本の公的年金財政の健全性をチェックするための仕組みで、いわば健康診断のようなものです。国民年金・厚生年金の収支について、少なくとも5年ごとに年金財政の長期的な見通しを検証します。検証の結果、「所得代替率」が将来的に50%を下回ると見込まれる場合、政府は見直しを検討し、必要な措置を講じることとされています。
2. 所得代替率とは?
所得代替率とは、現役世代の手取り収入に対する年金給付の割合を示す指標です。具体的には、65歳時点のモデル年金額を「その時点の現役世代(男性)の手取り収入(賞与含む)」で除して得た数値です。モデル年金とは、会社員の夫と専業主婦の妻という世帯で40年間保険料を納めていた場合の給付額を想定しています。
年金の実質的な価値は、物価や賃金の上昇を考慮する必要がありますが、財政検証では現役世代と比較する形で給付水準を表しています。現在の公的年金制度では、所得代替率の下限を50%と定めていますが、所得代替率50%は、現役世代の手取り収入の50%を年金として受け取れるということを意味しています。
なお、2024年度の現役世代の平均手取りは37万円で、モデル年金は22.6万円、所得代替率は61.2%でした。
計算式
所得代替率=夫婦2人の基礎年金+夫の厚生年金/現役男子の収入-公租公課
3. 財政検証の意義
財政検証は、①給付と負担の均衡②給付水準の見直しという2つの観点から検証しています。
財政検証では、経済・人口動態等の変化に応じて一定の条件を設定したうえで、年金財政の持続可能性の検証が行われます。公的年金制度が長期的に持続可能な制度となるために、必要なのが財政検証です。
現役世代の保険料と均衡が取れる給付水準の年金額がいくらになるのか、年金受給者の生活の保障として適切な水準であるかを確認します。財政検証は、政策判断の資料となり、その結果は制度改正など年金制度の設計に反映されます。
4.2024財政検証結果の概要
2024年の財政検証では、経済成長や労働参加、運用利回りを複数のケースで試算し、年金制度の持続性が検証されました。
「一人当たりゼロ成長ケース」(実質成長率0%・利回り1.7%)では、国民年金積立金が2059年度に枯渇し、その後の給付水準は所得代替率で3割台半ばに低下する見込みです。
一方、成長型経済移行ケースなど標準的シナリオでは、マクロ経済スライド終了後も所得代替率は5割台を確保し、積立金も長期にわたり維持される結果となりました。
2019年検証時と比べ積立金残高は約300兆円に増加しており、全体としては持続性に一定の余裕があると評価されています。
今後100年間については、目標である「所得代替率50%の確保」が可能という検証結果が示されました。
5.まとめ
財政検証は、公的年金の財政の健全性を定期的にチェックするための仕組みです。直近では2024年に実施され、その結果をもとに2025年以降、段階的な制度改正が行われています。
財政検証に関する一連の解説は、難解な用語も多くとっつきにくい印象があると思います。ですが、年金制度の議論、特に持続可能性について語るうえでは欠かせません。本記事を通して、財政検証に少しでも興味を持っていただき、理解を深めていただければ幸いです。
(参考)
厚生労働省.”将来の公的年金の財政見直し(財政検証)”
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html
<文=森 寛衆>
当ライターの前の記事はこちら:厚生年金の標準報酬月額の上限引き上げについて(令和9年9月1日~)|
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