皆さんは「TED」をご存じでしょうか?
TEDとは科学からビジネス、そして世界的問題まで幅広いトピックを取り扱う大規模な講演会を主催している団体のこと。2006年からインターネットを通じてトークの動画を配信しており、現在では3,500以上のトークを視聴することができます。
(TEDホームページ:https://www.ted.com/talks?language=ja)
“ideas worth spreading (広める価値のあるアイデア)”をスローガンとして掲げているTED。そのステージから発信されるトークは学術的な面白さだけではなくエンターテイメント性も豊かなものばかり。世界中の人々を惹きつけてやみません。
『TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則』の著者カーマイン・ガロ氏は、それらのスピーチの内容的な面白さだけではなく、プレゼンテーションに関するテクニックやスキルに注目して分析を行いました。
今回は『TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則』の内容を一部ではありますが紹介していきたいと思います。
目次
- ①論を組み立てる
- ②ボディ・ランゲージの重要性
- ③一番大切なもの ~情熱~
- まとめ
①論を組み立てる
TEDの壇上に立つスピーカーには、ある制約が課せられています。それは「プレゼンの時間は18分を超えてはいけない」というものです。
「18分ルール」を設けることの根拠としては
- 「情報が多すぎると処理が遅れてアイデアが伝わりにくくなる」という研究結果がある
- 18分あれば真剣なテーマについて語りつつ、聴衆の注意を引き付けておける
- あえて短い時間制限を設けることでスピーカー自身に話すべき内容を吟味させられる
といったものがあるそうです。とにかくTEDのスピーカーたちは独創的で興味深いアイデアを18分という時間内に納めなくてはいけません。
「プレゼンの時間は短くとどめること」。これはTEDに限らず、仕事や研究の場において素晴らしいプレゼンをするために欠かせない姿勢なのです。
そこで著者は素晴らしいプレゼンのために、「3点ルール」を意識することを勧めています。「3点ルール」とは人間がしっかり記憶できる情報は3つである、という経験則のことです。
情報を3つに絞ることで強い印象を与えることができるのは古代ギリシャの時代から知られており、アメリカ独立宣言の「生命、自由、幸福の追求」やスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学卒業式で送った祝辞が「点と点を結ぶ」「愛と喪失」「死」という3つの情報で構成されていることにも「3点ルール」の存在が見え隠れしています(実は本記事の【目次】を見ていただけると、構成が「3点ルール」を意識したものになっています)。
(TEDトークより「Awesome(最高)の3つの要素」(ニール・パスリチャ)https://www.ted.com/talks/neil_pasricha_the_3_a_s_of_awesome/transcript?language=ja)
②ボディ・ランゲージの重要性
CIAやFBIの捜査官に行動分析、尋問の仕方を訓練してきたベテラン警察官のモーガン・ライトは「ボディ・ランゲージはうそと真実を見分けるのに役立つ」と語っています。
NSA(米国家安全保障局)が行った実験で、すでに取り調べの結果が出ている刑事事件を題材にして、容疑者が真実を語っているか否かを判断してもらう、というものがありました。
その結果によると「取り調べの録音テープだけが提供されるグループ(A)と動画(音声無し)だけが提供されるグループ(B)を比べると、Bの正答率の方が10%ほど高かった」のだそう。
このように私たちが誰かに話す際には、音声情報(声の大きさ、スピード、抑揚など)と同じくらい非言語コミュニケーション、つまりボディ・ランゲージが重要になってくるということです。
実際にTEDのステージに登壇した人々を見ると、多くのスピーカーがジェスチャーや姿勢などのボディ・ランゲージを使いこなしています。
著者は「効果的なジェスチャーは説得力を倍増させる」と書いています。一方でやってはいけないボディ・ランゲージというものも存在します。例えば、「無意味にペンをノックしてカチカチ音を鳴らすこと」、「ステージ上の一か所で固まること」、「ポケットに手を入れること」などがそうです。
これらは舞台上だけ意識して直せばいいというものではなく、普段の生活から意識して矯正する必要がありそうです。
(TEDトークより「ボディランゲージが人を作る」(エイミー・カディ)(https://www.ted.com/talks/amy_cuddy_your_body_language_may_shape_who_you_are))
③一番大切なもの ~情熱~
多くの一流スピーカーを分析し、多数のスピーチ指導も行ってきた筆者は「一番重要なのは小手先のテクニックではない」と述べています。
筆者がもっとも重要だと認めるのは「情熱」。いくらプレゼンのスキルを磨いたところで、自分が情熱を持っていないテーマについて語って人の心を動かすことはできない、と述べています。
なので、私たちが何か素晴らしいスピーチをしたいと思ったならば「自分がそのテーマのどこに情熱を感じているのか?」を考える必要があります。ここで自問自答するときには少しコツがいります。それは単に「自分はどこに情熱を感じているのか?」と尋ねるのではなく「自分のハートが歌いだすきっかけは何だろう?」と尋ねること。そうすることでより自分が情熱を感じている、根源的なポイントが見つかるそうです。
(TEDトークより「ベンジャミン・ザンダーの「音楽と情熱」」(ベンジャミン・ザンダー)https://www.ted.com/talks/benjamin_zander_the_transformative_power_of_classical_music?language=ja)
まとめ
- 「3点ルール」を意識して、話すべき内容を見極めよう
- 効果的なジェスチャーを使い、悪いボディ・ランゲージは矯正しよう
- 話すテーマについて情熱を持とう
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この本ではタイトルにもある通り、「9つの法則」が紹介されています。本書では紙面の都合により3つの法則しか紹介できませんでしたが(そしてその3つでさえもきわめて部分的な内容どまりでしたが)、興味を持っていただけたら幸いです。日ごろからプレゼンの機会がたくさんある方はもちろん、そうでない人にも役立つ内容がたくさん含まれていると思います。
『TED 驚異のプレゼン 人を惹きつけ、心を動かす9つの法則』
(カーマイン・ガロ著、土方奈美訳)
〈文=早稲田大学 先進理工学部応用化学科 3年 千島 健伸(note)〉
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