夏目漱石が好きで、学生時代に漱石作品、書簡集、その他関係者が書いた漱石に関する本を読んだり、漱石関係の講演会に参加したりしていました。
小説などに関しては、ただ単に話しとして読んでも面白いですが、時代を超えても漱石が評価される理由は、物事の本質を捉える能力だと言われています。本質を捉えた考え方は時代を超えても色あせることなく、我々に気づきを与えてくれます。
夏目漱石の仕事に関する考えを一部引用します。
(『道楽と職業』「夏目漱石全集10」ちくま文庫、筑摩書房 より抜粋)
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己のためにするとか人のためにするとかいう見地からして職業を観察すると、職業というものは要するに人のためにするものだという事に、どうしても根本義を置かなければなりません。人のためにする結果が己のためになるのだから、元はどうしても他人本位である。すでに他人本位であるからには種類の選択分量の多少すべて他を目安(めやす)にして働かなければならない。要するに取捨興廃の権威共に自己の手中にはない事になる。したがって自分が最上と思う製作を世間に勧(すす)めて世間はいっこう顧(かえり)みなかったり自分は心持が好くないので休みたくても世間は平日のごとく要求を恣(ほしいまま)にしたりすべて己を曲げて人に従わなくては商売にはならない。この自己を曲げるという事は成功には大切であるが心理的にははなはだ厭(いや)なものである。
(中略)
要するに職業と名のつく以上は趣味でも徳義でも知識でもすべて一般社会が本尊になって自分はこの本尊の鼻息を伺って生活するのが自然の理である。
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仕事の本質は、「人のためにするものだ」「一般社会が本尊」であり、そのためには「己を曲げる必要」があると漱石は述べています。
また、この後の文で、一方、科学者哲学者もしくは芸術家は、自己本位で仕事をすることが本質であり、それが結果として他者のためにもなる稀有な職業だとも述べています。
漱石が言うように、仕事の本質は他者本位であり、自分の好き嫌いで仕事をすることなく、顧客が何を求めているかを常に考える必要があります。自分を曲げる必要ももちろんあると思いますが、自分を曲げる不愉快さよりも、他者に貢献することにフォーカスして仕事をしていく必要があります。
また、漱石は以下の様にも言っています。
「人のためにする分量すなわち己のためにする分量であるから、人のためにする分量が少なければ少ないほど自分のためにはならない結果を生ずるのは自然の理であります。」
仕事の本質は時代を超えて普遍的で、将来に渡っても変わることは無いでしょう。
〈文=株式会社シグマライズ 代表取締役社長 社会保険労務士 斎藤 清二(@sigmarize)〉
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