社会保険

知らないと損!「加給年金」とは?仕組みと受け取り条件をわかりやすく解説

目次

  1. 加給年金とは?
  2. 加給年金の要件
  3. 加給年金の受給額
  4. 振替加算とは?
  5. 注意点
  6. まとめ

1. 加給年金とは?

加給年金とは、厚生年金の被保険者が65歳に達した際、扶養している配偶者や子どもがいる場合に、老齢厚生年金に上乗せして支給される年金です。イメージとしては、会社員が配偶者や子を扶養しているときに支給される「扶養手当」の年金版と考えるとわかりやすいでしょう。

ただし、配偶者や子どもを扶養している場合は必ず受け取れるわけではなく、受給には一定の要件を満たす必要があります。

2. 加給年金の受給要件

加給年金の受給条件は以下のとおりです。

  • 65歳到達時点で厚生年金の被保険者期間が20年以上あること
  • 生計を維持している65歳未満の配偶者、18歳到達年度の末日までの子(または1級・2級の障害がある20歳未満の子)がいること

加給年金は、厚生年金の被保険者期間が20年以上の被保険者が65歳に達した時点で、対象となる配偶者または子どもがいる場合に受給することができます。判定のタイミングは、在職時の改定時点や退職時の改定時点です。

配偶者や子がいない場合や厚生年金保険の被保険者期間が20年(240月)以上ない場合は、加給年金を受け取ることができません。

3. 加給年金の受給額

加給年金の額は、以下の表のように、配偶者と1人目・2人目の子については各239,300円で、3人目以降の子は各79,800円と決められています。

対象者加給年金額年齢制限等
配偶者239,300円65歳未満であること(※大正15年4月1日以前に生まれた配偶者には年齢制限なし)
1人目・2人目の子各239,300円18歳到達年度の末日まで、または1級・2級の障害の状態にある20歳未満の子
3人目以降の子各79,800円同上
参照:日本年金機構「加給年金額と振替加算」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html

加給年金は、受給者の生年月日に応じて特別加算が上乗せされます。

受給権者の生年月日特別加算額加給年金額の合計額
昭和9年4月2日~昭和15年4月1日35,400円274,700円
昭和15年4月2日~昭和16年4月1日70,600円309,900円
昭和16年4月2日~昭和17年4月1日106,000円345,300円
昭和17年4月2日~昭和18年4月1日141,200円380,500円
昭和18年4月2日以後176,600円415,900円
参照:日本年金機構「加給年金額と振替加算」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html

4.振替加算とは?

65歳未満の配偶者がいて、加給年金を受け取っている場合、その配偶者が65歳に達した時点で加給年金の給付が終了します。

その代わり、配偶者が老齢基礎年金を受給できる場合には一定額がその配偶者に対して加算されます。 その加算を「振替加算」と呼び、資格を得るためには、65歳に達する際に以下の条件を満たす必要があります。

  • 大正15年4月2日から昭和41年4月1日までの間に生まれていること
  • 妻(夫)が老齢基礎年金の他に老齢厚生年金や退職共済年金を受けている場合は、厚生年金保険および共済組合等の加入期間をあわせて240月未満であること
  • 妻(夫)の共済組合等の加入期間を除いた厚生年金保険の35歳以降の(夫は40歳以降の)加入期間が、次の表未満であること
生年月日加入期間
1昭和22年4月1日以前180月(15年)
2昭和22年4月2日から昭和23年4月1日192月(16年)
3昭和23年4月2日から昭和24年4月1日204月(17年)
4昭和24年4月2日から昭和25年4月1日216月(18年)
5昭和25年4月2日から昭和26年4月1日228月(19年)
参照:日本年金機構「加給年金額と振替加算」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/seido/roureinenkin/kakyu-hurikae/20150401.html

5.注意点

■ 支給繰下げをすると加給年金はもらえないことがある

老齢厚生年金の受給を先送りする「支給繰り下げ」の申出をした場合、その期間分の加給年金額は支給されません。 年金は原則65歳から受け取れますが、希望すれば66~75歳の間まで受給を遅らせることができます。繰り下げ受給では、1か月遅らせるごとに0.7%ずつ受給額が増え、75歳まで遅らせると受給額は84%増額されることになります。

「老齢厚生年金を繰下げする」か「加給年金をもらう」か、どちらか得かは、老齢年金の金額や年齢によって変わってきます。加給年金の総額を、繰下げで増える金額で割ると、損益分岐点を計算することができます

「年金を繰り下げて受給額で増やしたいけど、加給年金も受け取りたい」という場合は、老齢基礎年金だけを繰り下げましょう。老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げることができるため、老齢基礎年金だけを繰り下げ(老齢厚生年金は65歳から受給)すれば、加給年金を受け取ることが可能です。

■ 支給停止されることがある

加給年金は、配偶者や子が要件を満たさなくなった場合に支給が停止されます。

たとえば、配偶者が以下のいずれかに該当すると、配偶者加給年金額は支給停止となります。

  • 老齢厚生年金(被保険者期間20年以上)の受給権を取得
  • 退職共済年金(組合員期間20年以上)の受給権を取得
  • 障害年金を受けている

■ 加給年金と第3号被保険者

加給年金は、配偶者が65歳になるまで支給されるため、年の差があればあるほど、一見するとお得なように見えます。しかし、加給年金が長く支給されるからといってお得になるとはいえません

その理由は、厚生年金の被保険者が65歳に到達すると、60歳未満の配偶者は国民年金の第3号被保険者となることができなくなるからです。

厚生年金の被保険者の配偶者が専業主婦(夫)の場合は「国民年金第3号被保険者」となりますが、言い換えると「国民年金第2号被保険者(厚生年金の被保険者のこと)の被扶養配偶者」となります。

被保険者が65歳に達すると、その時点で国民年金としての第2号被保険者ではなくなるため、その配偶者は「国民年金第3号被保険者」ではなくなります

そうなると、配偶者は60歳になるまで「国民年金第1号被保険者」となるため、それまでは納める必要がなかった国民年金保険料を納める必要が出てきます。※令和7年度は月額17,510円

年の差があるほど加給年金の支給期間は長くなりますが、配偶者自身の保険料負担のことも考える必要があるため、お得になるとは言い切れません。

6. まとめ

加給年金は、厚生年金の被保険者が65歳に到達した時点で、一定の条件を満たす扶養親族がいる場合に支給される年金です。

加給年金の申請は、最寄りの年金事務所で手続きを行う必要があるので、ぜひ覚えておくようにしましょう。

<文=森 寛衆>

当ライターの前の記事はこちら:なぜ給料が上がっても生活が苦しいのか?|名目賃金と実質賃金の違いを解説

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