前回の記事では「SINIC理論」という未来予測理論を紹介しました。今回はSINIC理論が描く「これからの未来予想図」について考えてみたいと思います。
目次
- 7段階の人類史
- 価値観の衝突、そして「自律社会」へ
- 人類の到達点「自然社会」
- コロナウイルスが与える影響は?
- まとめ
7段階の人類史
SINIC理論では、人間の歴史を大きく7段階に分けています。
原始社会→集住社会→農業社会→工業社会→最適化社会→自律社会→自然社会
(出典:オムロン公式ホームページ [1])
4段階目の「工業社会」は5つに細分化することができ、20世紀後半は工業社会の最終段階である「情報化社会」であったといえます。そして情報化を可能にしたのは電子制御技術の発展にほかなりませんでした。
価値観の衝突、そして「自律社会」へ
では今はどのあたりを進んでいるのかというと、現在は最適化社会に当たります。
最適化社会とはいわば「工業社会」と「自律社会」の板挟みになっている社会のこと。
工業社会で重視されていたのは「効率・生産性」でしたが、自律社会では「精神的な喜び」が大切にされるようになります。
最適化社会とは、効率や生産性を重視する工業的価値観から、精神的な喜びや心の満足感を重視する価値観への転換が起きる時代です。対立する価値観が衝突を繰り返しながら、より人間の内面の充実が成されるような価値観を持った社会へと変化していきます。[2]
もちろん、技術革新による物質的・経済的困窮の解消、諸制度の整備による不満要因の減少も最適化社会で起こるアプローチだと思いますが、自律社会に到達する上で必要なのは、禅の思想でいうところの「足るを知る者は富む」という精神性の獲得ではないでしょうか。
人類の到達点「自然社会」
SINIC理論が描く最後のステップが「自然社会」です。この自然社会は「生命メカニズムが埋め込まれた持続可能社会」とあります。[2]
手元にある資料だけでは、この定義が一体どのような社会を言い表しているのか知ることができませんが、しばし個人的に思いを巡らせてみます。
海の向こうの国々や遠い地域から運ばれてくるエネルギーに頼ることはなくなり、各地域が地域ごとの特色に合わせた自然エネルギー(太陽光、風力、波力、潮力、地熱など)で自給自足可能なインフラ整備。もはや都心及びその周辺地域に固まって住む必要はなくなり、地方への分散を進める人々。人間が自然を押しのけて人工物で埋め尽くした後に、申し訳程度の緑を添えるといった都市開発ではなく、もっと本当の意味で自然環境と人間文明が調和を成したまちづくり。ベーシックインカムの普及と機械に一部の業務を肩代わりしてもらうことで、人々はやりたくない労働に従事する必要がない体制。そして多様性を包容し、誰もが人間本来の創造性を発揮して生きることのできる社会―。 これは私の勝手な妄想的見解ですが、案外、老荘思想で夢見られた「桃源郷」のような社会に近いのではないかという気もします。
コロナウイルスが与える影響は?
現在進行形で社会的影響を与えている新型コロナウイルス “COVID-19”。
SINIC理論の考えに照らして考えてみれば、コロナウイルスの蔓延もまた社会的な動きとして、新たな技術の誕生を誘発することが考えられます。
ビジネスについていえば、リモートワーク需要に合わせて、すでにミーティングアプリ競争が激化しています。その他にもハンコ文化の是非も注目されているポイントです。医療面に関しては、遠隔診断の普及や無人で稼働する医療用ロボットの導入も進むかもしれません。
パンデミックが収束するかしないかによらず、今回の件をきっかけとして、新たなサービスや技術が生まれてくることでしょう。今この混乱期を乗り越えるために、そして「アフター・コロナ」の世界で置いてけぼりを食らわないように、最新の動向やニュースには敏感になっておきたいものです。
まとめ
- これからは「最適化社会」→「自律社会」→「自然社会」という流れ
- 最適化社会では、工業的価値観と精神性重視の価値観が衝突
- 文明と自然が調和した「自然社会」が到来
- 新型コロナウイルスもまた新しい技術を生むはず
参考文献
〈文=早稲田大学 先進理工学部応用化学科 3年 千島 健伸(note)〉
当ライターの前の記事はこちら:SINIC理論とは? 科学と技術と社会の関係性
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