社会

正しく知って責任を持った骨髄バンク登録を

目次

  1. 池江選手の白血病公表をきっかけに関心が高まった「骨髄バンク」とは?
  2. ドナーにたどり着くまで平均120日~130日かかる
  3. 提供する意思がないならドナー解除を
  4. 骨髄移植の解説と骨髄移植に対する自治体の金銭補償
  5. 責任を持った骨髄バンク登録を

1.池江選手の白血病公表をきっかけに関心が高まった「骨髄バンク」とは?

近年、骨髄バンクが世間の関心を集めている。

2019年2月に、競泳の池江璃花子選手が白血病を公表したことで、2019年2月には月ごとの登録者が1万人を超えた。例年月ごとに2000人~4000人が登録することを考えると爆発的な増加だった。また、俳優の木下ほうか氏も骨髄提供の体験を複数のメディアで語るなど、骨髄バンクの認知が広がっている。

骨髄バンクとは、白血病をはじめとする血液疾患などのため「骨髄移植」などが必要な患者さんと、それを提供するドナーをつなぐ公的事業である。ドナーが見つかる確率は兄弟姉妹の間でも4分の1、血の繋がっていない他人になると数百~数万分の1と言われている。そのため、近親者に適合者がいない場合、患者が独力でドナーを探すことはとても困難なこととなっている。日本では毎年新たに約1万人以上の方が白血病などの血液疾患を発症していると言われている。そのうち骨髄バンクを介する移植を必要とする患者は毎年2000人を超える。骨髄バンクは命を繋げる可能性を広げるための機関なのだ。

2.ドナーにたどり着くまで平均120日~130日かかる

一方でドナーのコーディネートに120日~130日ほどかかるという課題もある。神奈川県立がんセンター副院長・血液内科部長の金森平和氏は、2019年11月に横浜市で開催された「かながわ血液がんフォーラム2019」で、「私も参加した厚生労働省の研究班で、2004年1月~13年12月の骨髄バンクコーディネートの現状を調べたところ、10年間で患者1万8487人に対して22万3842件のコーディネートが行われましたが、移植まで到達したのは1万1038人で、移植率(移植患者数/コーディネートドナー数)は4.9%でした」と発言している。骨髄バンクドナーによる移植を希望しながら受けらなれなかった患者数は7449人で、その半分はドナーを探している間に死亡(43%)したか病状が悪化(7%)したためだった。骨髄提供が受けられた患者も、1人当たり平均約12人のコーディネートが必要だった。(平川経晃氏ら:「骨髄バンクコーディネートの現状」2018より)

3.提供する意思がないならドナー解除を

背景には、ドナー提供側の問題もある。1992年から2020年3月末までの実績によると、患者とHLAが一致したドナー登録者は類型32万3852人いたのに対し、最終的に提供に至った患者は2万4245人であり、割合にして約7.4%であった。ドナーの選定はデータベースを基にしたマッチングシステムにより、候補者が選定されるが、バンクから声をかける候補者数の上限は決まっているため、キャンセルがあれば改めて次の候補者に当たらなくてはならない。提供する気がない登録者が多くなることによって、それだけドナーの選定に時間がかかってしまう。

4.骨髄移植の解説と骨髄移植に対する自治体の金銭補償

ドナーを拒否する理由として、骨髄移植への理解不足が挙げられる。そこで、ここでは、骨髄移植の流れについて説明し、骨髄移植について説明した後、骨髄移植対して自治体が行っている金銭補償について深堀りする。

現在の骨髄移植の流れは、大まかにすると、書類にて提供の意思を確認し、検査、そして最終同意を行ってから、通常3泊4日程度の入院を行い、全身麻酔をした後で、腰の骨から骨髄液を採取する。

日本の骨髄バンクにおいてドナーの死亡例はない。ただし、過去に骨髄を採取したり提供したりした後に旧姓C型肝炎、後腹膜(腹部の背側)や左中殿筋(尻の筋肉の一つ)の血種といった健康被害が発生したことがあるが、いずれの場合も治療によって回復していて、現在は通常の生活に戻っている。

麻酔が覚めた後の痛みは通常1~7日で消えるが、採取後の症状には個人差があり、まれに1か月以上痛みが残る人もいる。微熱やのどの痛み、吐き気、全身のだるさが出ることもあるが、ほとんどの場合は1~2日で軽快する。

骨髄バンクでは、健康被害が発生した場合に備え、確認検査の同意書に署名をした時点から骨髄バンクが加入している傷害保険の対象となり、万が一ドナーに事故が起きた場合は最高1億円を限度として保険金が支払われることとなっている。ドナーが保険金を負担することはない。

これまでに腰痛、採取部位の痛み、手足のしびれなどの症状に対し保険が適用された。1993年から2017年3月末までに2万例以上の骨髄採取が実施されたが、入通院保険が適用されたのはこのうち181例と、わずか0.8%程度であった。

自治体では、働いている人の骨髄移植を促進するために、金銭面での補償も広がっている。現在は全国705自治体にドナー助成制度が存在する。例えば、横浜市の場合、指定の骨髄・末梢血管細胞の提供のための通院・入院の日数1日につき2万円の助成金を交付している(1人1回の提供につき7日を上限とする)。自治体によって、助成制度が異なるので骨髄移植を検討している方は、住んでいる地域に助成金が出るかチェックして頂きたい。

5.正しく知って責任を持った骨髄バンク登録を

池江選手の活躍や、著名人の活動によって、骨髄バンクは年々知名度を上げているが、骨髄移植の理解不足から安易にドナー登録をし、結果的にドナーを拒否されてしまい、骨髄移植が遅れてしまう人がいることが分かった。

骨髄移植について正しい知識を得た上で、一人でも多くの命を救うために、責任を持った骨髄バンクへの登録をしてみてはいかがですか?

<文=末田椋資>

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