社会

国際的な学力調査PISA2018から何が変わったか――ICT環境の整備に着目して

目次

  1. はじめに
  2. PISAとは?
  3. 2018年の日本のPISAの結果
  4. PISA2018から何が変わったか
  5. 1人1台の端末を――進むICT化

1.はじめに

新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって延期されていた国際的な学習到達調査PISA(Programme for International Student Assessment)が今年実施される。この記事では、PISAの概要について述べた後、2018年のPISAの結果について概説し、その課題からどんな取り組みが行われてきたか、ICT環境の整備に着目した後、今後の展望について述べる。

2.PISAとは?

PISAとは、OECD(経済協力開発機構)が実施する国際的な学力調査のことである。PISAの目的は、義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けた知識や技能を実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測ることである。内容は、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野(実施年によって、中心分野を設定して重点的に調査)を行う。加えて、生徒質問紙、学校質問紙による調査を実施している。調査対象は、調査段階で15歳3か月以上16歳2か月以降の学校に通う生徒である(日本では高等学校1年生が対象)。実施調査年は、2000年から3年ごとに実施される。(2021年2024年に予定されていた調査は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、それぞれ2022年、2025年に延期されている)。参加国は2022年5月28日現在、83か国となっており、EU加盟国や日本、韓国、イギリス、アメリカ等の38か国で構成されるOECDではない国も参加している。

3.2018年の日本のPISAの結果

2018年に実施された日本のPISAの結果は、504点とOECDの平均を上回った(OECD平均487点)。具体的に見ると、数学的リテラシーは527点(OECD平均489点)、科学的リテラシーは529点(OECD平均489点)、読解力は504点(OECD平均489点)であった。それぞれの順位は、数学が6位、理科が5位、読解力が15位であった。この結果を受けて、萩生田文部科学大臣は、『学習指導要領の検討過程において指摘された、判断の根拠や理由を明確にしながら自分の考えを述べることなどについて、引き続き課題が見られることも分かりました。更に、学習活動におけるデジタル機器の利用が他のOECD加盟国と比較して低調であることも明らかになりました』とコメントし、文部科学省として、これらの課題に対応し、児童生徒の学力向上を計るために

・来年度からの新学習容量の着実な実施により、主体的・対話的で学びの深い視点からの授業改善や、言語能力、情報活用能力育成のための指導の充実
・学校における一人一台のコンピュータの実現等のICT環境の整備と効果的な活用
・幼児期から高等教育段階までの教育の無償化・負担軽減等による格差縮小に向けた質の高い教育機会の提供


等の取り組みを学校、教育委員会等の関係者と連携・協力して推進すると述べた。

4.PISA2018から何が変わったか

前節の萩生田文部科学大臣の2つ目のコメントから、ICT環境の整備状況の推移に関して、どのような取り組みが行われてきたか①教育用コンピュータ一台当たりの児童生徒数、②普通教室の無線LAN整備率、③インターネット接続率を確認する。まず、①教育用コンピュータ1台当たりの児童生徒数は、平成31年の5.4人から、令和2年3月のデータでは4.9人と0.5人と減少している。1点留意したいことは、この数値の減少には環境整備だけでなく、少子化の影響もあるということである。しかし、それを考慮しても、この数値は平成20年3月からの統計から一番の伸び率で評価ができる数値だと言える。次に、②普通教室の無線LAN整備率は平成31年3月のデータは、41.0%から、令和2年3月には48.9%に上昇していた。この伸び率は、平成24年3月の統計開始から一番の伸び率を記録している。最後に、③インターネット接続率は、平成31年3月の93.9パーセントから令和2年3月には96.6%に上昇している。(快適にインターネットを使用できるとされている30Mbps以上の数値)。参考に、100Mbpsの数値は平成31年3月の70.3%から令和2年3月には79.2%まで上昇していた。まとめると、PISA2018年が実施されてから、ICT環境の整備は、急速に改善されていることが分かる。

5.1人1台の端末を――進むICT化

今回の記事では、PISAの概要と、2018年に行われたPISAの結果、その結果に対する文部科学省の取り組みをICT環境の整備状況の推移に着目して分析した。その結果、ICT環境の整備が急速に進められ改善されてきていることが分かった。12月13日に閣議決定された令和元年度補正予算案においては、児童生徒向けの一人一台端末と、高速大容量の通信ネットワークを一体的に整備するための経費が盛り込まれた。文部科学省は、ICTの活用を行うことで、子ども達の公正で個別最適化された学びや創造性を育む学びに寄与するものであり、特別な支援が必要な子ども達の可能性を大きく広げるものとしている。またICTの導入・運用を加速することで、教師の負担軽減に貢献し、学校の働き方改革にも繋がるとしている。

<文=末田椋資>

【参考】
文部科学省,『OECD生徒の学習到達度調査(PISA)の調査結果』 (2022年5月28日閲覧)

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1344310.htm

文部科学省,『令和元年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)』 (2022年5月28日閲覧)

https://www.mext.go.jp/content/20201026-mxt_jogai01-00009573_1.pdf


文部科学省,『子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育 ICT 環境の実現に向けて ~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~ ≪文部科学大臣メッセージ≫』 (2022年5月28日閲覧)

https://www.mext.go.jp/content/20191225-mxt_syoto01_000003278_03.pdf,

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