目次
- 関係改善の機運が高まる日韓関係
- 日本と韓国の歴史認識のどこが問題なのか
- 戦争と女性の人権博物館
- 西大門
- 未来の日韓関係
1.関係改善の機運が高まる日韓関係
2022年に尹錫悦大統領が就任してから、日韓関係は改善の兆しを見せている。具体的には、岸田首相と共に、日韓シャトル外交が再開している。しかし、依然として領土問題や慰安婦問題について歴史認識の違いから根本的に問題が解決しているとは言い難い。本稿では、日本と韓国どちらの主張が正しいかという歴史認識的な正当性は問わず、どこで日本と韓国の歴史認識が異なっているかフィールドトリップで見聞きしたものも示しながらどこで考えや問題への態度が異なっているか文献も交えながら考える。
2.日本と韓国の歴史認識問題のどこが問題なのか
日本と韓国の歴史認識問題を考える上で、抑えるべきポイントは2つある。第1に、戦争終結後、日韓両国で納得のいくまで交渉することができなかったからである。太平洋戦争の終結後、朝鮮半島の統治権が第二次世界大戦の戦勝国であったアメリカとソ連に引き継がれ、日本と朝鮮半島の人々がお互いの利益関係を整理し、精算する機会が失われた(木村,2022)。日本と韓国が最終的に韓国との関係を精算し、両国との間で国交が結ばれたのは1965年の日韓基本条約であった。しかし、当時の東京オリンピックを開催し高度経済成長を遂げていた日本に対し、分断国家であった韓国朴正煕政権は大きな譲歩を強いられることになる。そのため、交渉の過程でこの問題の解決の方法に不満が残ったと指摘している(木村,2022:108)。
第2に法律の解釈の仕方に大きな違いがある。ざっくりとした例を挙げると、日韓基本条約は、朴正煕政権で結ばれたが、朴正煕はクーデターで政権を取った政権であり、法は有効ではないと捉える見方がある(木村,2022:110)。つまり、日本政府が「法の下、条約は有効」とするのに対し、韓国政府はそもそも条約が有効ではないという点で大きなズレを抱えることとなる。
まとめると、戦争終結後、問題の記憶が新しいうちに当事者同士で問題を解決できなかったこと、法の解釈についての大きな隔たりの結果、今日まで歴史認識問題が続く結果を導くことになった。
3.戦争と女性の人権博物館
次に、フィールドトリップで取った写真と共に日韓関係について考える。筆者は、ソウル市内にある戦争と女性の博物館に韓国人の友人と訪れた。
写真は、慰安婦像である。慰安婦像は在韓日本大使館前で挺身隊問題対策協議会(韓国の市民団体)が日本の慰安婦問題解決のためのデモ(通称:水曜デモ)の1000回目を記念して在韓日本大使館前に設置したことがきっかけである。これは2011年の出来事であり、遠い昔の出来事ではない。パンフレットにはベトナム展示館について解説が含まれており、ベトナム戦争下で韓国軍より性暴力被害を負った被害者に関する展示があると記載されていた。展示の最後には、このようなことを防ぐために、今後どのような取り組みを進めていくのかに関して記されていた。
日本は2015年12年の日韓外相会談における合意によって、慰安婦問題の「最終的不可逆的な解決」を確認し、この合意に関して国際社会も歓迎したとしている。一方、2021年1月8日、元慰安婦等が日本国政府に対して提起した訴訟において、韓国ソウル中央地方裁判所が、国際法上の主権免除の原則の適用を否定し、日本国政府に対し、原告への損害賠償の支払などを命じる判決を出し、同23日、同判決が確定している(外務省)。
まとめると、慰安婦問題は、①問題の顕在化が条約の締結後であったこと、②国際法の適用の有無で日韓が揉めていることがわかる。慰安婦問題が取り上げられたのは1991年と最近の出来事で、1965年の日韓基本条約で話の俎上に上がってこなかったこと。条約が締結した後に問題が顕在化したことによる慰安婦問題に関しては取り扱いが例外ではないかという主張が行われるようになった。それに対して日本は1965年の日韓請求権・経済協力協定(1)、(2)の中慰安婦問題を含めた問題は「完全かつ最終的に解決」としている。2つ目は、前にも挙げたような国際法の適用の有無である。
4.西大門
次に、西大門である。日本が1908年に設置したとされる西大門刑務所の前には韓国の有名コンビニエスストアであるCUがある。この店の収益は韓国を守った遺族に提供される。
場所が場所なので、日本製品の不買運動に参加と書かれている。その一方で、ポケモンやポカリスエット(大塚商会)や日本発祥のLOTTE(売上の9割が韓国であることには注意が必要)Pokemonの商品が売られているなどしており、とても厳しい制約がかけられている訳ではないようだ。
上の写真は、西大門刑務所の模型である。西大門刑務所は植民地時代、最も大きな刑務所であった。Netflixで去年の年末から今年の1月配信された「京城クリーチャー」の設定にも出てくるなど、注目を集めている。
5.未来の日韓関係
留学開始から四ヶ月が経ち、仲の良い韓国の友人と日韓関係について話すなど深いレベルの議論をすることが多くなったが、不思議にも充実感を感じている。というのも、価値観の違いを理解して、感情論で話すのではなく、エビデンスに基づいて話すことや、国同士の関係と個人間の関係は分けて考えること(人格否定をしない)が大事だと議論を通じて学ぶことができたからだ。2024年6月には日中韓教育相会合が開催され互いの国について理解を深めるために大学間レベルでの日中韓の人的交流が盛んになることが盛り込まれ、教育交流を通じて日中韓の未来に向けた相互理解と信頼を育むことを強化することが盛り込まれた。
<文=末田椋資>
【参考文献】
木村幹,2022.『誤解しないための日韓関係講義』.PHP新書
外務省,『慰安婦問題についての我が国の取り組み』. 2024年6月30日取得. https://www.mofa.go.jp/mofaj/a_o/rp/page25_001910.html
当ライターの前の記事はこちら:高麗大学留学体験記〜中間試験とプレゼンその他
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