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自立を促すマイクロファイナンスという選択肢

目次

  1. 自立を促すマイクロファイナンスという選択肢
  2. グループ貸付の取り組み
  3. グループ貸付の問題点
  4. グラミン銀行成功の鍵は何だったのか
  5. 完全無償支援から自立を促す支援を

1.自立を促すマイクロファイナンスという選択肢

マイクロファイナンスという取り組みを知っているだろうか?マイクロファイナンスとは、貧しい人々に対し、無担保で少額の融資を行う貧困層向け金融サービスのことである。この取り組みはバングラデシュ人の経済学者・実業家であるムハマド・ユヌス氏によって進められ、貧困層の経済的・社会的基盤の構築に対する貢献を評価され、2006年にノーベル平和賞を受賞している。この記事では、2章でマイクロファイナンスのグループ貸付の取り組みを紹介する。3章では、グループ貸付の問題点について言及し、グラミン銀行が2002年にグループ貸付を取りやめていることについて言及している。4章ではグラミン銀行の成功の鍵について、高野氏の記事を引用して考察する。第五章では、これまでのまとめとマイクロファイナンスの有効性について述べる。

2.グループ貸付の取り組み

この章では、マイクロクレジットの普及に多大に貢献した、バングラデシュのグラミン銀行の取り組みを紹介する。グラミン銀行とは、「貧しい人々も起業家としての能力を持っており、資金さえあれば商売を始めて利益を得ることができる」との信念の基でムハマド氏によって設立されたマイクロクレジット機関である。ムハマド氏は前述の信念の基、様々なスキームを導入することによって、高い返済率を実現している。[i]

特に、「グループ貸付」という取り組みが注目されている。この取り組みは親族以外の信頼できる5人組でチームを組み、共同で返済を行っていくという方法だ。この方法は1人でも返済できない人がいると他の4人は今後借入ができなくなるという仕組みである。この方法のメリットは主に3つ。1つ目は、メンバーが相互に助け合うことを促すことだ。他の人が返済できなくなりそうな時、他のメンバーが仲間を助けて今後もお金を借りられるようにしようとする相互で助け合えるようになる。2つ目は、互いに返済を滞らせないか監視し合うことができるということだ。誰かが返済をおろそかになりそうな時、自分にも被害が及ぶのでそのような事がないように互いにチェックし合うため、内発的に、健全な資金管理を促すことができる。これは、外部の監視コストを減らすことにも貢献する。3つ目は、返済の可能性が高い人に貸付を行うことができるということだ。返済に危険を及ぼす人とは組まないようになるので高い返済率の実現に貢献している。


[i] 上西英治,2007,「マイクロファイナンスの意義とその課題―グラミン銀行を事例とした論点整理―」『地域政策研究』第10巻第2号,高崎経済大学地域政策学会.

3.グループ貸付の問題点

 しかし、近年の研究では、グループ貸付の有効性について疑問が投げかけられている。アジア経済研究所の高野久紀氏がベトナムで行ったフィールド・ラボの研究[i]によると、グループの連帯責任が強いほうが債務不履行率は高いという結果を支持している。この現象の背景には自分が払わなくても、他の人が払ってくれるだろうという「ただ乗り」問題があると指摘している。そして、何より、グラミン銀行自身が2002年にグループ貸付制度を放棄している。その理由としては、他のメンバーが返済を怠ると他の人が肩代わりしないといけないので軋轢が増えたことや、リスクの分配という面で、積極的に投資したい人と、地道に地道に成果を上げたい人での考え方の相違等で、グループで借り続けることのメリットが薄まってきたことが挙げられた。


[i]https://www.ide.go.jp/library/Japanese/Research/Theme/Eco/Microfinance/pdf/mfexperiment.pdf

4.グラミン銀行成功の鍵は何だったのか

 それでは、グラミン銀行成功の鍵は何だったのか。アジア経済研究所高野久紀氏の記事から3つの要素を引用する。[i]


1つ目の要素は、返済に対する動学的インセンティブである。返済をしないと将来の融資を安価で受けられなくなることが返済の強いインセンティブになっていると指摘した。


2つ目の要素は、多頻度少額返済である。週1回、月1回のペースで少しずつ返済をしていくことにより、問題のありそうな点を早期発見して適切な支援をすることによって未払いを防ぐことができた可能性を指摘している。


3つ目の要素は、データ収集である。返済ができなかった借り手から、情報を集め、調べたことが有効に作用した可能性が指摘されている。


[i] 日本貿易振興機構アジア経済研究所,高野久紀氏記事(2021年2021年10月22日閲覧)

5.完全無償支援から自立を促す支援を

これまで、マイクロファイナンス事業を行っているグラミン銀行のグループ貸付について、有効性と問題点について言及した。現在は個人のみの返済も可能であるグラミン総合的システムに移行し、利用者は以前より、幅広い貸付をうけることが可能になった。あげるだけの依存を深める支援から、自立を促すマイクロファイナンスという取り組みの理解・普及が進むと良いなと感じた。

<文=末田椋資>

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