勉強法

ゲームはどのように問題解決に貢献するか?②

目次

  1. なぜゲームが問題解決に貢献するのか?前項の振り返り
  2. 情報のオンデマンド化とジャストインタイム化
  3. 水槽(Fish Tanks)
  4. 砂場(Sandboxes)
  5. 戦略としてのスキル(Skills as Strategies)
  6. プレイヤーはゲームの世界観やシステムをどのように理解するのか?

1.なぜゲームが問題解決に貢献するのか?前稿の振り返り

本稿では、前回の記事に引き続き、ゲームが問題解決能力の向上に貢献する理由について概説する。前回の記事では主に3つの要因について説明した。

1つ目は、よく整理された問題(well-ordered Problems)である。具体的には、学習者が今何をすべきか進行するレベルに合わせて段階的に提示していくことで、プレイヤーは自分の力で問題を解決できるようになるということが明らかとなった。

2つ目は、心地よいもどかしさ(Pleasantly Frustrating)である。具体的には、学習が最も効果的に機能するのは、自分の努力が報われていると感じられることと、その証拠を得る事ができること時である。例え失敗したとしても、なぜ失敗したかというフィードバックがあれば、それだけでプレイヤーを惹きつけ、「こうすれば問題はクリアできる」ことを示すことで、「あと〇〇さえできれば」という心地よいもどかしさをプレイヤーに与え問題解決能力の向上に寄与される。

3つ目は、専門知識(Cycles of Expertise)である。専門知識は、学習者がスキルをほぼ自動的に使えるようになるまで練習し続けることで、どの分野でも形成される。専門知識を学ぶサイクルによって、学習者は学習を管理する方法を学び、「学ぶことを学ぶ」ことに熟練できるようになる。

2.情報のオンデマンド化とジャストインタイム化

本稿では、上記の3つの要因に加え、4つの要因について概説する。第一に、情報のオンデマンド化(On Demand)とジャストインタイム化(Just in time)である。例えば、人間は言葉による情報をたくさん与えられても、うまく使いこなすことができない。言葉による情報は、オン・デマンド(ニーズに基づき)でジャストインタイム(必要だと感じた)の時に初めて機能するとされている。ゲームのマニュアルも科学の教科書と同じように、ゲームをプレイする前に読もうとすると意味がない。だが、一度ゲームをプレイすればマニュアルの内容は明確になり、すべての言葉が意味を持ち始める。もちろん、マニュアルを隅から隅まで読む必要はなく、自分の目標やニーズに合わせて活用することが問題解決能力の向上に貢献する。

3.水槽(Fish Tanks)

第二に、水槽(Fish Tanks)である。水槽は、実際の生態系を単純化したものである。単純化することで、複雑な生態系では見えにくい重要な変数とその相互作用が見えてくる。学習に置き換えると、単純化されたシステムを作り、いくつかの重要な変数とその相互作用を強調すれば、学習者は複雑なシステムに圧倒されることなく、基本的な関係を知り、マスターするための第一歩を踏み出せるようになる。

4.砂場(Sandboxes)

第三に、砂場(Sandboxes)である。具体的には、砂場は子供にとって安全な場所であり、現実の代わりのものとして機能する。この比喩は、学習に用いられる。学習者が本物に近い状況に置かれ、リスクや危険性が大幅に軽減されている場合、「本物である」という実感と達成感を味わうことができる。Gee教授によると、砂場は、水槽と近い概念であるが、水槽よりもゲーム全体の複雑さを感じられつつも、リスクと結果は『実際の』ゲームと比べて軽減されているものと定義されている。

5. 戦略としてのスキル(Skills as strategies)

第四に、戦略としてのスキル(Skills as strategies)である。ゲームには目的が存在し、その目的を達成するべくプレイヤーは何度も練習し、新たなスキルを学んでいく。逆に言えば、目標や目的がないのに何度も練習することは難しいとされている。ゲームは物語やレベルというシステムを使ってプレイヤーに目標を提供することに優れている。そして、「そのためにはこのスキルが必要だ」と提示し、学習を促す。

6. プレイヤーはゲームの世界観やシステムをどのように理解するのか

最後に、プレイヤーはゲームの世界観やシステムをどのように理解するのか記述する。具体的には、ゲームは楽しいけど勉強は難しいとよく言われるが、それは必ずしも、「ゲームは簡単」ということを意味しない。ゲームを理解する鍵について、Gee教授は、①システム思考と②行動イメージとしての意味(Meaning as Action image)にあるとしている。
 

まず、システム思考とは、全体像がわかっていれば人は効率よく学ぶことができるということである。具体的には、スキルや戦略、アイデアについて、それが大きなシステムの中のどこに位置づけられるかを理解したときに、人は最もよく学ぶことができるとされている。どんな経験よりも、より大きな意味のある全体像の中にどう組み込んでいくかを理解することで細かい知識が欠けていたとしても理解するスピードが早くなる。  

次に、行動イメージとしての意味(Meaning as Action Image)とは、人間は一般的な定義や論理的な原理によって思考するのではなく、経験したことや想像力を駆使して再構築して考えるものとされている。具体的には、物事を理解するのに必要なのは想像力であり、その源は経験ということになる。学習内容に関連した経験があればそれが具体的にどういうことなのかを理解することに役立つ。これは、抽象的な概念を理解するのに役立つ。抽象概念が理解できれば、それに付随するあるいは想起させることができる。

【参考文献等】

Gee, J. P. (2005). Learning by Design: Good Video Games as Learning Machines. E-Learning and Digital Media, 2(1), 5–16.

https://doi.org/10.2304/elea.2005.2.1.5

教育のスゴい論文, なぜゲームが学習を促進するのか?(2)問題解決編

https://note.com/sugo_ron/n/ne59d1ca2e7dc

教育のスゴい論文, なぜゲームが学習を促進するのか?(3)理解編

https://note.com/sugo_ron/n/n01afe7ec76f8

<文=末田椋資>

当ライターの前の記事はこちら:ゲームが問題解決に貢献する?

株式会社シグマライズでは、就活生向けに「就職支援コミュニティ【α】」というLINEのオープンチャットにて就活生の支援を行っています。過去のコミュニティ利用者にサポーターとしてコミュニティに残ってもらっていますので先輩に相談することも可能です。

サービスの詳細について知りたい方は、こちらのサービス紹介ページから詳細確認下さい。