書評

「悪い失敗」を減らし「良い失敗」を経験するには? ~「失敗学」を読んで考えてみた~

人間だれしも、生きている限りは失敗から逃れることができません。だからこそ失敗と上手に向き合って、自分個人や組織の成長につなげたいものです。

東京大学名誉教授の畑村洋太郎氏が提唱した「失敗学」というものがあります。これはもともと機械工学における失敗に限定されていたものでしたが、徐々にその他の領域-ビジネスや日常生活―にも活用できることが分かりはじめ、人間個人や組織に関する失敗を取り扱うようにもなりました。

今回は畑村洋太郎氏の著書「図解雑学 失敗学」を読んで、失敗との上手な向き合い方について考えてみました。

目次

  • 1.「失敗」について知る
  • 2.「悪い失敗」を減らす
  • ①仮想演習をする
  • ②失敗の周期性を知る
  • ③制約条件が変われば定式も変わる
  • 3.「良い失敗」から学ぶ
  • 4.まとめ

1.「失敗」について知る

ビジネスや受験の世界でよく読まれている本の中身を覗いてみると、そのほとんどが成功した人が書かれたものだと思います(たとえば起業に成功した人や、多くの生徒を合格に導いた実績のある人など)。

このように多くの人の関心は、成功事例に向きやすい一方で、失敗に向く機会はそう多くありません。

しかし「失敗は成功のもと」ということわざがあるように、失敗から多くのものが生まれたり文化創造のきっかけになったりすることが多々あります。

成功の陰に隠れがちだけれども見過ごすのはもったいない失敗。それにスポットを当てるのが「失敗学」の意義だと言えます。

一口に「失敗」と言いますが、失敗は「悪い失敗」と「良い失敗」に分けて考えるべきだ、と畑村氏は言います。

「悪い失敗」とは、不注意や誤判断などの単純ミスが原因で何度も繰り返される失敗のことです。これは事前の努力を怠ったばかりに、無意味に被害が広がり、向上につながる収穫を残さない失敗です。

「良い失敗」とは、個人あるいは集団が成長するために通過する必要がある失敗のことです。こういった失敗は「痛み」や「悔しさ」を伴いますが、それによって新しい知見を発掘し、さらなる成長を生み出す素地が形成されることになります。

「私たちは悪い失敗を極力減らしながら、良い失敗から学ぶべきである」。これが失敗学の説く大原則だと感じました。次の章ではその具体的な方策について書いていきたいと思います。

2.悪い失敗を減らす

悪い失敗を回避するためにできることは何でしょうか?

ここでは3つのポイントに絞ってまとめてみました。

①仮想演習をする

高く険しい山に登ることを考えてみます。当然、その山を何度も登頂したことのある現地ガイドを雇うことになると思います。

ここで優秀なガイドとは「この道は狭いから注意して渡るべき」、「昨日雨が降ったからここを通過するのは危険」、「ここは転落の可能性が高い」など常に危険な状況を想定して案内することのできるガイドではないでしょうか?

登山が問題なく進行している間は、優秀なガイドと普通のガイドの違いは表面化しないかもしれません。しかし一度トラブルが起きれば、判断や状況把握、問題処理において歴然とした違いがみられるはずです。

このように、うまくいっていく状況だけを考えて計画を立てたり行動するのではなく、起こりうるトラブルを何パターンも想定し、アクションプランをいくつも備えておくことを「仮想演習」と呼びます。

これによって、事前に防ぐことのできる無駄なミスを減らし、仮に防げなかった場合にもその影響を最小限にとどめることができます。

②失敗の周期性を知る

デューク大学のヘンリー・ペドロスキー教授によると、世界各地の巨大な橋は30年周期で崩落を起こしているそうです。

原子力発電所の事故についても同様のことが言えます。1960年代、原子力発電の草創期においては米ソで原子力発電所の事故が多発しました。しかしそれ以降にも残念なことに大きな事故が発生しています(1986年チェルノブイリ原子力発電所事故、1999年茨城県東海村で起きた臨界事故など)。畑村氏によると、その周期はおよそ20年だといいます。

このように工学の世界では「失敗は周期的に起こる」という事が知られています。

このほかにも産業の世界でも「産業衰退は30年で起こる」ということがよく言われるそうです。その証拠に戦後日本を支えた繊維・造船・鉄鋼などの分野は萌芽期から衰退期に差し掛かるまでの期間がおよそ30年でした。

失敗・衰退の周期性に対抗するには、崩壊や衰退が起こる前の段階からあらかじめ手を打ち始めることが大切です。

③制約条件が変われば定式も変わる

囲碁の世界に「定石」(=最善手)があるように、ビジネスの世界にも「定式」が存在します。一般的にはこの定式通りにやればうまくいくとされています。

確かに定式に沿って行動することは無駄がなく効率的です。そしてうまくいく可能性も高いでしょう。

しかし注意しなければならない点があります。それは定式が制約条件の変化によって通用しなくなる可能性があることです。

あくまでも定式は、ある期間、ある場所における制約条件に対して最適化されたものでしかありません。技術革新や法改正、社会的な価値観の変化によっては悪手になる可能性すらあることを肝に銘じておくべきでしょう。

制約条件が整っていれば、定式に頼ることは賢い選択ではあります。しかしいつまでも、それに固執するのは危険です。常に制約条件の変化に目を配り、既存の定式が通用するか吟味しなくてはなりません。

3.「良い失敗」から学ぶ

それでは次に「良い失敗」から学ぶにはどうしたらいいかまとめてみたいと思います。

人類の技術開発の歩みは、多くの人命が奪われたり大きな損害を出してしまった悲惨な事故を抜きにしては語れません。

畑村氏はその具体例として、リバティー船の破壊事故(*1)や1954年に相次いだコメット機の墜落(*2)、1940年に崩落してしまったタコマ橋(*3)を挙げています。

(*1:第二次世界大戦中に大量生産されたリバティ―船のうち4分の1が破壊事故を起こした。原因は低温脆性と呼ばれる問題だった。)

(*2:英で開発された世界初のジェット機が相次いで墜落事故を起こした。原因究明の結果、当時は未知だった金属疲労のメカニズムが解明された。)

(*3:米で建設されたばかりのタコマ橋というつり橋が崩壊した事故。自励振動という現象が崩壊の理由だった。)

しかしこれらの事故が、新たな物理現象の発見やさらなる技術開発の萌芽となったこともまた事実です。

このように新たな次元にステップアップすることで、それまではぶつからなかった問題に直面することになります。

畑村氏は、これを「未知への遭遇」による失敗だと位置づけています。

これはその人・組織が最前線にいることの証明、いわば「フロントランナーの証」です。決して恥じるべきものではないと畑村氏は説きます。

自分たちがこれまでぶつからなかった問題に直面するということは、その分、成長しているということ。それを乗り越えた先には必ず新たな発見と成長が待っているはずです。

自分にとっての「未知」と遭遇するには、とにかく新しいことに挑戦すべきです。

新しい分野に挑戦することもそうですし、今の分野でさらに高い次元に挑戦していくことも「未知」と遭遇する方法だと思います。

まとめ

  • 「悪い失敗」:単純ミスによって繰り返される失敗
  • 「良い失敗」:未知との遭遇によって引き起こされる失敗
  • 良い失敗をするには、まず挑戦してみること。乗り越えた先には多くの成長が待っている

いかがだったでしょうか?

失敗したからといってなんでもかんでもクヨクヨする必要はなく、むしろ自分が成長した証としてポジティブに捉えなおすことができると分かったのは大きな学びでした。

【参考】

・畑村洋太郎著, “図解雑学 失敗学”, ナツメ社(2006).

〈文=早稲田大学 先進理工学部応用化学科 3年 千島 健伸(note)〉

当ライターの前の記事はこちら:私が考えるミニマリズムのメリット

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