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仕事の評価の難しさについて

株式会社シグマライズ、社長の斎藤です。

今回は、仕事の評価の難しさについて説明したいと思います。

誰しも仕事をする中で、自分の働きが正しく評価されていない、とか、他人と比べて自分の方が仕事の負担を大きいのに給与が変わらない、他人と比べて自分の方が成果を上げているのに給与が変わらない、など不満に思ったことがあるのではないでしょうか。

社労士として仕事をする中で、人事制度の構築の支援を企業から依頼されることがあり、多くの会社の人事制度を見てきましたが、100%従業員すべての方が納得している人事制度が構築できている会社を見たことはありません。

多くの場合、必ず従業員のうちの誰かが不満に思う制度になるか、また、時間が経つうちに不満に思うような制度になってしまいます。

なぜ、従業員の誰かが不満に思うような人事制度になってしまうのか?

その理由は、従業員の働き方の違いと、労働法上の制約があるからだと私は考えています。

今回は、従業員の働き方にどういった違いあるのか?また、どういった労働法上の制約があるのかを説明したいと思います。

1.従業員の働き方について

多様な働き方がありますが、基本的にはすべての働き方は以下の2つに分けられます。

  • ①労働時間が長くなれば、成果の大きくなる働き方
  • ②労働時間の長さに関係なく、成果がでる働き方

①は、作業的な仕事が当てはまります。自分の手を使って何かを作る、とか、データを入力する、とか、荷物を運ぶ、とかです。

②は、アイデア勝負の仕事が当てはまります。新規商品・サービスを開発する、とか、デザインを考えるとか、もしくは、管理職として部下を管理することで成果を上げる、とかです。

仕事の役割によっては、①と②が混ざっているようなケースもあります。

2.仕事の評価の仕方

会社は①の仕事であれ、②の仕事であれ、成果が上がるのであればその成果に応じてその成果を上げた従業員を評価したいと考えています。

ここでいう成果とは、売上だったり、利益だったり、社内への良い影響だったり、長期的に会社に恩恵が出るような取り組みだったり、といろいろですが、会社は、成果が上がるのであればそれを単純に評価したいと考えています。

3.労働法上の制約

労働法上の1つ目の制約は、単純に言うと、所定の労働時間を超えた部分については、残業代を支払はなければならない。というルールです。これは成果に関係なく、労働時間が長くなれば長くなるほど残業代を払わなければならない。ということです。2.で書いたように会社は成果を評価したいと考えているのですが、労働法上は、成果とは関係なく労働時間が長くなったらそれに応じて賃金を支払うように定められています。

1.の①で書いた「労働時間が長くなれば、成果の大きくなる働き方」をしている従業員については、この労働法上の制約は特に問題になりませんが、1.の②で書いた「労働時間の長さに関係なく、成果が出る働き方」については評価の仕方が問題になります。

②の働き方に関して、労働時間を基準に考えてしまうと、同じ成果を出した従業員がいた場合に、労働時間が長い方が多くの賃金が発生することになります。(会社は同じ成果を出した従業員には同じ賃金を支払いたいと考えています。)

これが仕事の評価を難が難しい1つ目の要因です。

労働法上の2つ目の制約は、単純に言うと、一度上げた給与を下げることができない。というルールです。これは長期的に従業員を雇用する場合に発生する課題なのですが、②の働き方は、労働時間に関係なく、成果を出せる働き方になる一方、どんなに働いても成果が出ないことも起こりえます。世の中の変化が大きい中、一度は②の働き方で成果を出せた方の給与を上げたのちに、成果が出せなくなることもあるわけです。その時に労働法上のルールで給与を一方的に下げることができません。(かなり合理的な昇給、降給ルールを作るか、従業員の同意を取得するかしないと給与を下げれません。※トラブルになった時に裁判上でも有効と判断される合理的な昇給、降給ルールを作ることは、実務上かなり難しくなっています。また、もし作れたとしても今度は制度を変更することが難しくなります。(世の中の変化が大きい中、ルールの変更ができない、というのはかなり厳しいです。))

一度給与を上げたら下げることができないのであれば、会社は昇給を慎重に行わざるを得ません。

これが仕事の評価を難が難しい2つ目の要因です。

4.評価の限界

1.~3.で書いたように「働き方」「会社の評価軸」「労働法上の制約」によって、従業員の評価を正しく行ってそれを給与に反映させること、構造的にかなり難しいことが感じ取れたのではないでしょうか。

その中で、各企業が良い人事制度を作ろうと努力をしています。中には評価制度を作らずに社長の一存にする企業もあります。(それはそれで「社長の一存にする」という、人事制度なのだと考えるのが自然です。)

私は人事制度は意味が無いという話をしたいのではなくて、評価には限界がある。ということをお伝えしたいです。

評価に限界があることを知った上で、自分を働きを高く評価してくれる人事制度を持っている会社を探すのも良いと思いますし、自分の働きを高く評価してくれるような人事制度が作られるように会社に働きかけるのも良いと思います。

ただ、すべての人が納得するような人事制度を作るには限界がある。ということを構造的に知っていた方が、自身の選択肢が増えると思います。

仕事の評価の難しさについては、動画でも解説していますので、御興味ありましたら是非以下の動画もご覧ください。

〈文=株式会社シグマライズ 代表取締役社長 社会保険労務士 斎藤 清二(@sigmarize)〉

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