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『繁栄のパラドクス』を読んで

株式会社シグマライズ、社長の斎藤です。

『繁栄のパラドクス:クレイトン・M・クリステンセン他 著』を読んで、気づきのあった部分をまとめました。まだ著書を読んでいない方は参考にしてもらえればと思いますし、もう著著を読んだ方は自分の気づきのあった部分と比べてもらえればと思います。

まず、著書のクレイトン・M・クリステンセンは、『イノベーションのジレンマ』の著書として有名です。私も過去に『イノベーションのジレンマ』は読みました。『イノベーションのジレンマ』の内容を本当に簡単に書くと、以下のようなことが書かれています。(結構前に読んだのでちょっと自信ないですが。。。)

「イノベーションは既存の市場で大きな影響力を持っている会社から起こりづらい。なぜなら既存の市場で大きな影響力を持っている会社がイノベーションを起こそうとすると既存の市場での影響力を自ら削ぐことに繋がってしまうから。なのでイノベーションは既存の市場の中で大きな影響力を持っていない企業から起こることが多い。また組織面から見ても既存の成功している事業と、新規事業としてイノベーションを起こそうとしている事業が同じ企業に共存している場合、評価や報酬の分配、事業の進め方などで齟齬が起きることが多い。」

それを踏まえた上で『繁栄のパラドクス』には以下のようなことが書かれています。

「繁栄はイノベーションによってもたらされ、時に持続されるが、そもそもどのようなイノベーションが繁栄に繋がっているのか、またどんな条件が揃うと持続するのか。繁栄を目指して失敗するケースはどういうケースが多いのか。」

私が著書を読んで特に重要な部分だと思われる箇所を以下に引用しました。

「貧困の解決と長期的な繁栄は繋がらないのだ。繁栄をもたらすのは新しい市場を創造するイノベーションである。教育や医療、行政機関、インフラなど、繁栄との関連が強く示唆される指標を改善するための資源を貧困国にいくら注ぎこんでも、持続性のある真の繁栄が創出されるわけではない。国が繁栄しはじめるのは、特定のタイプのイノベーション、すなわち市場創造型イノベーションに投資したときだ。市場創造型イノベーションは、持続可能な経済発展にとって触媒の役割を果たす。」

そもそも貧困を解決するような長期的な繁栄のためには、新しい市場を創造するイノベーションが一番必要であり、ルールやインフラの整備自体はあくまで市場を創造するイノベーションを補佐する役割をするということが書かれています。

この部分では国の繁栄について書かれていますが、企業の繁栄とも読み替えられるように思います。いくら会社のルールやシステムに投資をしたとしても、そもそも市場に受け入れられるサービスがなければ企業は繁栄することはないでしょう。1番目に市場に受け入れられる良いサービスが必要であり、2番目にそれを提供するための良いルール、システム、組織体制が必必要になります。

仕事がら企業のルールや組織体制の相談を受けることが多いのですが、上記の考えに則れば、そもそも企業のルールや組織体制の変更が、より良いサービスの提供を推進することに繋がっているのか考える必要があります。ルールの作成や組織変更の役割を担ったから、ルールを作る、組織体制の変更をする。というのでは本末転倒になります。

『繁栄のパラドクス』内には、繁栄に関係した国のルールに関して以下のような記載があります。

「制度は社会を創造するのではなく、社会の価値を繁栄したものである。そのため強固な制度を構築すること(言うなれば今後何世紀も続く、その国の価値観を形成・維持すること)は、「他の国で通用したことをそのまま輸入し、それに水を加えてかき混ぜてでき上がる」ほど単純ではない。」

先進国で採用されているルールを、新興国にそのまま適用させても機能しないことが多い。という事例を挙げて、ただ単に制度を真似るだけで国が繁栄するわけではない。ということが書かれています。

こちらも同様に国単位ではなく企業単位でも同じことが言えると思います。うまくいっている企業で採用されているルールをただ真似るだけではうまくいかない。特に教育や評価のルールは事業規模、成長スピード、業界の慣習、経営陣の価値観等多くの要素が交わって、それこそその企業の価値が反映されてルールが(明示的であれ、暗黙的であれ)結果的に作られていることが多い。どこかの企業でうまくいっているルールをそのまま採用するのではなく、自社にあったルールを時間をかけて少しずつ作っていかざるを得ないように思う。

仮に厳しいルールを作成し、それに従わなければ罰を与えるようなルールをさらに設けた場合、ルールを作成するだけでなく、ルールに従っていない者の取り締まりも行わなければなりません。先進国で採用されているルールを、後進国に適用させるのが難しい理由がここにもあります。ルールを作成した後の取り締まりに大きなリソースを割かなければならなくなり、そのリソースを割くことができないため、ルールが形骸化する。ということが起こります。

企業のルール作りでも同様の観点が重要だと思います。ルールの設定の際にルール通りに執行させるのに割けるだけのリソースがあるか、そのリソースを割くことが本当により良いサービスを顧客に持続的に提供することに繋がっているのか検討する必要があります。

『繁栄のパラドクス』を読んであらためて重要だと思った点は以下になります。

 ①先に市場の創造の企画があり、次にルール・組織作りがある。

 ②ルール・組織は会社の価値観を反映した物。簡単に真似はできない。

 ③ルール作りは執行させることも考えて設定する必要がある。

自社の経営にも役立てていきたいと思います。

少しでも興味ある方は『繁栄のパラドクス』を是非、読んでもらえればと思います。

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〈文=株式会社シグマライズ 代表取締役社長 社会保険労務士 斎藤 清二(@saitoseiji0124)〉