社会

日本はなぜ難民受け入れが少ないのか

目次

  1. ウィシュマさんの死
  2. 日本は難民受け入れが少ない
  3. 外交上の問題
  4. 管理の問題
  5. 政治的認知の問題
  6. 難民問題解決の糸口は「議題にあがること」にある

1.ウィシュマさんの死

2021年3月6日、名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった。33歳だった。ウィシュマさんは体調の悪化を訴え、体重が20キロ減ったり、嘔吐吐血を繰り返していたそうだが、十分な治療を受けることができずに帰らぬ人となった。入管施設でウィシュマさんが亡くなったことは、連日報道され、与党が提唱した入管法改定案を撤回させるまでに至った。この出来事の背景には日本の難民受け入れ体制が整備されていないことが根底にある。今回の記事では、入管法についてではなく、なぜ日本は難民受け入れが少ないのかについて掘り下げたいと思う。

2.日本は難民受け入れが少ない

日本の難民受け入れ率は低い。法務省出入国在留管理庁の報道資料によると、令和2年における難民認定申請者数は3936人で、難民認定手続きの結果、日本で在留を認めた外国人は91人。内訳は難民認定者数が47人、難民とは認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人が44人だった。申請者の国籍は67か国に渡り、主な国籍はトルコ、ミャンマー、ネパール、カンボジア、スリランカとなっていた。難民受け入れについて、コロナ禍前の2019年のデータから各国を比較してみると、ドイツの難民認定数は53,973人(認定率25.9%)、米国は44,614人(認定率29.6%)もいるのに対し、日本は44人(認定率0.4%)であった。もちろん各国で置かれた状況が異なるため、参考の情報になってしまうが、この数字を見れば日本が他国と比べて非常に難民受け入れに厳しいということが分かる。それではなぜ日本は難民受け入れが少ないのか。考えられる理由を3つに分けて説明したい。

3.外交上の問題

難民の受け入れが少ない理由1つ目は、外交上の問題があるということだ。難民を認めるということは、難民が出てしまった国の政治を否定することを暗に意味をする。仮に、日本がA国から難民を受け入れたとする。そうなるとA国の政治を否定することとなるので貿易が断られたり、交渉が円滑に進まないという懸念が出てくる。日本が良好な関係を維持しながらその国と外交を進めていきたいと考えているのなら難民問題に目をつぶり、その国と外交を行っていくことが考えられる。

4.管理の問題

難民の受け入れが少ない理由2つめは、「難民を管理する」視点が強いということだ。難民認定は法務省出入国在留管理庁が行っているため、保護というより、管理する見方が強い。日本は国際基準と比べると公平性、透明性を確保した手続きの基準、難民の受け入れ体制が整備されていない。

5.政治的認知の問題

難民の受け入れが少ない理由3つ目は、政治的認知が低いということだ。難民の受け入れに寛容なドイツは難民の政治的認知が高く、ナチスが行ったユダヤ人迫害の反省から難民が助けを求める権利(亡命権)が憲法で認められていて、難民を助けることの価値がドイツ社会全体で認められている。だからこそ、メルケル首相が2015年、シリア内戦による難民の受け入れに寛容な姿勢を示すなどの思い切った政策を行うことができたと考えられる。日本も1970年代後半から、ベトナム戦争終結後にインドシナ三国(ベトナム・ラオス・カンボジア)から逃れたインドシナ難民を1万人以上受け入れたり、難民条約に批准した1982年以降にも条約難民500名以上の受け入れを行った。しかし、世間からも認知がされていないため、問題として意識されていないことに加え、難民を受け入れることによって治安が悪化することや社会のリスクと繋げるなど根拠のない誤解や偏見が難民の受け入れを厳しくしているということも考えられる。

6.難民問題解決の糸口は「議題にあがること」にある

2021年5月29日に行われたウィシュマさんをしのぶ会に400人超が参加したと報じられた。ウィシュマさんの妹 ワヨミさんはTBSの取材に対し、「皆さんの名前はそれぞれわかりませんが、ここに多くの日本人、外国人が来てくれて、姉の死のために一緒に悲しんでくれたことに感謝します」と語った。ウィシュマさんの死は世論を動かし、難民認定手続中の外国人でも、申請回数が3回以上となったら強制送還できるようにする入管難民法改正案が与野党の激しい攻防の末、今国会での採決が見送られた。入管庁が法改正を試みた背景には、母国への送還を免れるため難民申請を繰り返す不法滞在者の存在が入管施設で長期収容が行われがちな一因だとみなしていることが考えられる。しかし、この法律が通ってしまうと難民が迫害のおそれがある母国に戻されてしまうという懸念があった。ウィシュマさんの死を受けて、次の国会では難民問題についてどのような話し合いが展開されるか注視したい。そして、私達も生きるために日本にやってきた人々の意志を汲むためにも、難民問題について話し合い、どうすれば難民も日本人もお互いに理解し合い、共存していくことができるのか活発に意見を出し合うことが難民問題の解決の糸口になるのではないかと考える。

<文=末田椋資>

当ライターの前の記事はこちら:日記のススメ

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