目次
- 科学的に効果的なListeningの勉強方法
- 外国語はどのようなプロセスで覚えるべきか
- シャドーウィングの学習効果を上げるコツ
1.科学的に効果的なListeningの勉強方法
近年、英語学習、特にListeningを行うに当たって、シャドーウィング(shadowing)が注目されている。その背景には、心理言語学、言語認知科学の研究の発展がある。例えば、玉置(2005)によると、外国語として英語を学ぶ日本人の普通の大学生を、Aグループ:1日2時間で、5回にわたるシャドーウィングをした学生、Bグループ:初回に20分間の復唱練習のみを実施し、それ以上のリスニング指導は行わなかった学生の2つのグループに分けて、それぞれのグループでどのように力が伸びたか調査した結果、①Aグループは、Bグループと比較して、英語を聞いて復唱する力が伸びる、②発音速度が速くなり、英語音声のリスニング力が伸びることが明らかとなった。そこで本稿では、科学的に効果的なListeningの勉強方法としてシャドーウィングを取り上げ、主に、門田・玉置(2017)を基に、シャドーウィングの理論と実践について概説する。
2.外国語はどのようなプロセスで覚えるべきか
まず、外国語を覚えるプロセスは3つあり、①全体的チャンク段階、②分析的規則学習段階、③自動的操作段階がある。
第一に、言語学習の初めには、単語と単語の組み合わせ・繋がりを全体として覚える①全体的チャンク段階がある。この段階では、イディオムなどのほぼ固定化された定型表現を学習することが②分析的規則学習の基礎となるとしている。
第二に、文法的に意味分解をしたり、単語をいかに組み合わせて文を作るかといったルールの学習である、②分析的規則学習段階がある。例えば、「私は、あなたを愛している」という文を作りたい場合、先頭に主語に自分”I”を入れ、動詞は愛するという意味の”love”を挿入し、文末にloveの目的語であるあなた”you”を入れるといったように、体系的な文法を学ぶことによって言語を運用していく能力を身に付けることが可能となる。
第三に、自動化されたレベルで言葉を運用できる、③自動的操作段階である。②分析的規則学習段階に加え、文法規則を意識しなくても、流暢で自動化された運用のレベルに達することが必要とされており、そうすれば、言語の操作より意味メッセージの方に注意を集中できるなど、母語話者に近似した言語処理の方法を獲得できるようになると考えられている。
3. 外国語はどのようなプロセスで覚えるべきか
次に、シャドーウィングの学習効果を上げる6つのコツを紹介する。1つ目は、自分のレベルに合ったものを使用することだ。また、自分の興味関心がある素材を使用することが継続的な学習のインセンティブになる。2つ目は、できる限り、インプット音声に集中してシャドーウィングすることである。練習を繰り返し、ある程度音声を正確に追うことができれば、意味内容が理解できるようになる。3つ目は、意味が理解できない場合、意味を確認することである。意味が分からなければ、音声に集中することが難しいため、辞書を引くなどして、理解できない語彙・フレーズを特定し、理解することが必要である。また、テキストの提示を伴うシャドーウィングに関しては、英語音声のリスニングやシャドーウィングに不慣れな人にとっては、音声提示だけでは全く復唱できない場合でも、文字を同時に見れば、できるようになるという点で有効である。しかし、テキストだけを見て、音声を無視してしまうと、シャドーウィングの目的を果たすことができないことに留意が必要である。人は、聴覚・視覚の両方のモードから同時に言語インプットを受け取って、同時に処理することは不可能である(これは認知心理学では、一般的に選択的注意と言われる)。4つめは、間違えたりしても、飛ばさず継続することである。5つ目は、リズムやイントネーションなどの韻律(prosody)に着目してシャドーウィングをすることである。韻律の変化が、母音・子音といった分節音よりも、音声発話の理解度を大きく左右することが分かっている。文のリズムやイントネーションなど、音の強さ、高さなどの変化に着目し、これらに敏感に反応することが推奨される。6つ目は、自身のシャドーウィングの学習状況を見つめるメタ認知を養うことである。メタ認知とは、自身の学習状況をモニターする能力のことであり、具体的に言うと、「うまくシャドーウィングできてる時はいつか、できない時はどんな状態か」などについて、自身の言語活動を観察し、修正していくことである。この能力はListeningの能力だけでなく、日常生活の広範に渡って活用できる能力である。
【参考文献】
門田修平・玉井健,2017,『英語の「音」がズバリつかめる!決定版英語シャドーウィング改定新版』,コスモピア株式会社.
玉置健,2005,『リスニング指導法としてのシャドーイングの効果に関する研究』,風間書房.
<文=末田椋資>
当ライターの前の記事はこちら:ヒッチハイクの方法論
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