社会

軍事研究の是非を問う①~「日本学術会議」とは?~

ことし9月の新政権発足後すぐ、日本を騒がせたのが日本学術会議推薦会員の任命拒否問題」です。

日本学術会議から推薦された会員候補105名のうち6名の任命を拒否した政府。

政府は「総合的・俯瞰的な活動を確保する観点から判断した」と答弁しているものの、明確な任命拒否の事由を挙げておらず、説明責任を果たしていないのではとの批判が上がっています。

この出来事の背景には「軍事研究は絶対にしない」という矜持を持つ日本学術会議と、「軍事・安全保障分野の技術開発を進めたい」政府の対立構造が潜んでいます。

この記事では、戦後日本の学術界の平和姿勢を打ち出してきた日本学術会議について解説します。

今、日本における「科学と軍事」のあるべき関係性が問われています。

目次

  • 「日本学術会議」とは?
  • 発足の経緯
  • 政府と日本学術会議の対立
  • まとめ

「日本学術会議」とは?

「日本学術会議」とは、日本の人文・社会科学、生命科学、理学・工学の全分野科学者を内外に代表する機関であり、210人の会員を擁しています。主な役割としては以下の4つが挙げられています(*1)。

  1. 政府に対する政策提言
  2. 国際的な活動
  3. 科学者間のネットワーク構築
  4. 科学の役割についての世論啓発

(*1:http://www.scj.go.jp/ja/scj/index.html

日本を代表する学術機関というだけあって、歴代会長には名だたる研究者が名を連ねています。たとえば、量子電磁力学の研究で1965年ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎(第6・7期)、京都大学の霊長類研究の権威である山極壽一(第24期)、現会長には素粒子研究で2015年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章(第25期)が着任しました(敬称略)。

発足の経緯

ここでは、日本学術会議が発足した経緯を振り返ります。

第二次世界大戦の真っただ中、1938年に第1次近衛文麿内閣によって国家総動員法が施行され、政府が国内の資源や物資を自由に統制運用できるようになりました。

それに続いて、1940年には科学動員実施計画綱領が閣議決定され、研究者や資材の確保・配分の権限を握ることで、政府が研究機関に大きな影響を持つようになりました。

その20年前の1920年に学術研究会議(日本学術会議の前身)が設置されていたのですが(*2)、1943年にその下部組織として科学研究動員委員会が設置され、科学動員の中心を担うようになりました。

(*2:日本学士院ニュースレター 2015.10 No.16, “学士院の歩み 第9回 国際学術団体への加入”,https://www.japan-acad.go.jp/pdf/newsletter/janews16.pdf

また、戦時中においては、政府からの科学研究費が大幅に増額され、軍事研究に関連する研究所が多く設置されたことから、池内了(いけうち さとる)・名古屋大学名誉教授は戦時中の科学者に対して「科学者は研究費と研究場所の確保ができ、戦争の果実を充分に味わったといえよう」とコメントしています。

1945年12月に、戦時の科学動員の中心となった学術研究会議の廃止が決定しました。

そして1949年、その後身として日本学術会議の発足が決まります。

日本学術会議は、日本の科学界が軍事研究を通して戦争に加担したことを深く反省し、1950年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、1967年にも「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発しています。

その方針は変わらず、2017年に出された「軍事的安全保障研究に関する声明」では上記2つの声明を継承することが宣言されています(*3)。

(*3:http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-23-s243.pdf

政府と日本学術会議の対立

戦後以降、軍事研究には一切関与しない姿勢を固持してきた日本学術会議。

一方の政府は軍事・安全保障の観点から、日本学術会議に対して「軍学共同」への方向転換を求めています。

ことし11月の参院内閣委員会で、井上信治科学技術担当相が、軍事・安全保障分野の研究に否定的な日本学術会議に再考を求めていることを明らかにしたことは、その一例と言えるでしょう。

(東京新聞, Web版, “軍民両用研究、学術会議に検討要請 井上担当相 組織見直し論絡め揺さぶり”, https://www.tokyo-np.co.jp/article/69273

また、政府が方向転換を求めている理由は、単に軍事・安全保障の拡充だけではありません。

今やだれもが恩恵を受けているGPS(衛星利用測位システム)や、インターネットの技術は、もともと軍事目的で開発されたものが転用されたものです。

こういった「科学研究の成果は軍事にも民生にも活用できる」という特性は、「デュアル・ユース」「用途の両義性」といわれており、政府が軍事研究の推進を主張する根拠の一つとなっています。

「軍事・安全保障の為には科学研究が不可欠」

「軍事研究は科学の発展を促す」

「科学が戦争に加担した歴史を反省し、二度と繰り返してはならない」

様々な主張と思惑が入り乱れ、「科学と軍事」の議論を複雑化しているといえます。

まとめ

  • 戦時中、日本の科学界は戦争の片棒を担いでいた
  • 日本学術会議は「軍事研究拒否」の姿勢を打ち出している
  • 科学は「デュアル・ユース」

【参考文献】

・池内了,「科学者と戦争」,岩波新書(2016).

〈文=早稲田大学 先進理工学部応用化学科 3年 千島 健伸(note)〉

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