目次
- 国連システム―UNESCO、UNICEF、The world Bankの特徴
- 全ての子どもの権利の実現を目指すUNICEF
- 平和な文化の構築を目指すUNESCO
- 極貧の根絶と繁栄の共有を促進するThe World Bank
- それぞれの専門性を生かし、効果的な支援と終戦を
1.ロシアのウクライナ侵攻により注目増す国連システム
―「UNICEF(国連児童基金)によるとロシアの攻撃により、子どもの3分の2が避難を余儀なくされています」―[i]
ロシアのウクライナ侵攻により、私達は上記のような国際機関の声明の報道を目にする機会が多くなっている。様々な国際機関がある中でとりわけ目立つのが、国連システム(小松ら,2016,148)である。[ii]国連システムは、国連ファミリーに属する機関で構成される。例えば、国連事務局、国連の諸基金や計画、専門機関、その他の関連機関などである。各種基金や事務所、計画は総会の補助機関である。専門機関はそれぞれの特別協定によって国連に結びついており、経済社会理事会および総会に報告する。それら関連機関はそれぞれの専門の領域で活動をし、それ自身の立法機関と予算を持つ。参加機関はなんと31もある。[iii]本稿では、このような国連のシステムの中で、特に教育に携わる主要な機関であるUNICEF(国連児童基金)、UNESCO(国連国際児童緊急基金)、The World Bank(世界銀行)、UNDP(国連開発計画)のビジョンやミッション、特徴について概説し、各機関と日本の関わりについても言及する。
[i] UNICEF,『ウクライナ危機 深まる子どもの権利の危機 子どもの3分の2が国内外で避難生活』, https://www.unicef.or.jp/news/2022/0121.html,
(2022年7月28日最終閲覧).
[ii] 小松太郎 (2016) 『途上国世界の教育と開発――公正な世界を目指して』上智大学出版
[iii] 国際連合 『国連システム』, https://www.unic.or.jp/info/un/unsystem/,
(2022年7月28日最終閲覧)
2.全ての子どもの権利の実現を目指すUNICEF
UNICEFは、「子どもの権利の保護を提唱し、子どもの基本的ニーズを満たし、子どもの可能性を最大限に発揮する機会を拡大すること」をミッションとして掲げ、加えて、「すべての子どもの権利が実現される世界をめざして」というビジョンを持ち、全ての子ども、特に最も脆弱で、最も不利な立場に置かれた子どもたちが、生き延び、健やかに成長するための平等な機会を得られる世界を目指し、活動を行っている。[i] UNICEFの特徴は、不利な立場にある子ども達を対象にし、保健、栄養、水、HIV/エイズ、教育、ジェンダーなどの分野で現場レベルでの活動を行っていることである。
UNICEFは戦後の日本にも支援を行い、1945年から東京オリンピックが初めて開催された1964年まで15年間に渡って、学校給食用の粉ミルクや医薬品など、当時のお金で65億円にのぼる支援を受けている。
[i] UNICEF,『ユニセフについて』, https://www.unicef.or.jp/about_unicef/about_mis.html,(2022年7月28日最終閲覧)
3.平和な文化の構築を目指すUNESCO
UNESCOは、平和な文化の構築に寄与することであり、貧困の根絶、持続可能な発展と教育、科学、文化のコミュニケーションと情報を通じた異文化対話を行うことを掲げている。[i]UNESCOの特徴は、知的協力機関として、行政レベルでの教育協力を行っていることである。国際的な基準や規範を形成し、各国の政策にそれらが反映されることで、より適切な教育実践が実現していくことをサポートする面にある。そのため、UNICEFのように現場で活動を行うというより、政策への働きかけが中心となる。
また、UNESCOは世界遺産の登録・保護を行っていて、日本では、2022年7月28日現在、広島県の原爆ドーム、長野県の白川郷・五箇山の合掌造り集落など、25の世界遺産が登録されている。
[i] UNESCO, https://www.un.org/youthenvoy/2013/08/unesco-united-nations-educational-scientific-and-cultural-organization/#:~:text=UNESCO’s%20mission%20is%20to%20contribute,%2C%20culture%2C%20communication%20and%20information.
(2022年7月28日最終閲覧)
4.極貧の根絶と繁栄の共有を促進するThe World Bank
The World Bank(以下WB)は、2030年までのミッションとして、2つのミッションを掲げている。1つ目は、一世代の間に極度の貧困を根絶することで、2つ目は、繁栄の共有を促進することである。WBの特徴は、教育の投資効率性という考え方の導入を促してきたことである。WBは、1960年代から70年代にかけて労働力予測に基づくマンパワー開発を目指して、教育支援を重視するようになった。70年代半ばからは、経済成長と所得再分配を同時に促進するための「公正を伴った経済成長」アプローチと、貧困削減のための「ベーシック・ヒューマン・ニーズ」アプローチの統合を目指す中で、教育分野への融資を徐々に拡大させていった。そして、80年代に入ると教育の投資効率について幅広く検証し、特に初等教育への投資効率が高いことを示した。その結果、主要ドナーによる初等教育分野への援助が増大し、途上国の教育政策の策定過程に大きな影響を及ぼした。
戦後の日本も、WBから融資を受け、1953年の関西電力による多奈川火力発電所から始まり、東海道新幹線や名神高速道路の建設などに対する貸し出しが行われた。[i]
[i] The World Bank, 『世界銀行と日本~かつて日本の復興で、いま世界の開発で』, https://www.worldbank.org/ja/country/japan/brief/31-projects#2
(2022年7月28日最終閲覧)
5.それぞれの専門性を生かし、効果的な支援と終戦を
本稿では、国連システムの概略と、UNICEF、UNESCO、WBそれぞれのビジョンやミッション、特徴について概説し、各機関と日本の関わり合いについても言及した。ここから言えることは、教育協力に深く携わっている同じ国連の組織であっても、それぞれが支援を行う対象や方法、専門性が異なることが分かった。ロシアのウクライナ侵攻で、ウクライナの人達の人権が侵害される中、各機関の専門性を生かし、役割を分担しながら効果的な支援を行う努力、そして戦争を止める努力が今も続けられている。
<文=末田椋資>
当ライターの前の記事はこちら:なぜ途上国の教育なのですか?
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