その他

動機(motivation)とは?

目次

  1. 動機とは?
  2. 動機付けとは何か?:四項関係からみた心理現象
  3. 動機付けの先行要因:環境・文脈
  4. 動機の種類

1.動機とは?

人や動物は、何か行動する能力を持っていたとしても常にその行動をとるとは限らない。こうした問題を解決するのは動機付けという概念である。つまり、能力と行動の間を埋めるのは、能力を行動というプロセスに移す動機付けというプロセスである。本稿では、動機とは何か定義し、動機づけのプロセスについて解説した上で、動機付けの要因について説明する。動機付け(motivation)とは、行動や心の活動を開始し、方向づけ、持続し調節する心理行動的なプロセスである(上淵,2012)。詳細は表1のようになる。

表1 動機付けの特徴

1 心理行動的プロセスが始発する契機(動機)がある。
2 心理行動的プロセスには目標(目的)があり、目標に向かうという意味での方向性(志向性)がある
3 心理行動的プロセスには強さがある。
4 心理行動的プロセスを続けるが、時間は限定的。
5 心理行動的プロセスの制御・調整がある(これは特徴に含めない人もいる)。
6 上記の全ての特徴は変化しうる。
上淵(2012)を参考に筆者が作成

この表から、人の行動の多くは、動機付けが関係している。動機付けは、目標という視座からすれば目標志向的なプロセスとも言える。ここでいう目標志向性とは、主に快を求め、不快を避けることである。具体的には、食欲を満たすために食事を取る、テストで赤点を取って恥を書きたくないから勉強するなどが挙げられる。

2.動機付けとは何か:四項関係からみた心理現象

動機付けプロセスを考えると、図1のような4つの要素から構成されることが理解できる。

図1 上淵(2019)を参考に筆者が作成

しかし、動機付けは図1のプロセスのように進むとは限らず、先行要因→動機→表出→結果という循環的なプロセスを描き、結果は先行要因にフィードバックされ、ループをなしている。 動機付けの研究の内容は、次の4つが挙げられる。第一に、動機付けを発動される先行要因は何かということである。第二に、動機とは何かということである。第三に、動機付けの表出とは何か?である。第四に、結果とは何か?である。

3.動機付けの先行要因:環境・文脈

動機付けの先行要因に関して、個人・個体を取り巻く文脈は多岐にわたり、motivationに大きな影響を及ぼす。この影響は、motivationを刺激して、動機付けプロセスを発動させる刺激変数と、発動している動機付けの強度や持続性に変化を与えるという調整変数としての役割を果たすものに分かれる。刺激変数は、具体的にいうと、必ず取り組む必要のある必修の学習課題や空腹時の食事などが考えられる。調整変数は、具体的に言うと、学校の朝の時間の司会が親友の場合とそうでない場合は、朝の時間の関わりは異なってくる。

また、環境や文脈を別の視点で大別すれば、対人文脈、社会文化的文脈、物理的文脈がある。対人的文脈とは個人を取り巻く他者との関係が中心となる。例えば、好きな先生の担当科目は努力するなどが挙げられる。社会的文脈とは、個人を取り巻くより大きな社会の影響、文化の生活様式、価値観などが含まれる。具体的には、社会主義国家のラオスでは、定期的に国旗掲揚を行うことを義務付けられているなどである。物理的文脈とは、個人が埋め込まれている物理的環境を指す。例えば、冷房や扇風機がなく、講義に集中できないなどである。また、注意するべきこととして、動機と動機付けの違いが挙げられる。「動機」は上の図の「動機付け」のプロセスを生じさせて持続させる個体内プロセスの総称である。中身を具体的に言うと、要求、欲求、認知、情動などの変数を含有する。加えて、動機といっても、状況変数と特性変数の両者がある。つまり、状況によって値が変化する変数と、特定の値を取りやすい傾向(特性、パーソナリティ)の2種類がある。主に特性変数が実際の状況変数に影響すると考えられる。なお、感情系の動機は特性変数が多く認知系の動機は状況変数が多い(信念等を除く)。

4.動機の種類

本節では、要求等の感情系の動機を説明し、次に、認知系の動機等を説明する。第一に、要求(needs)である。要求は、個人の生活を維持し、成長や健康を養う必要条件である。例えば、性欲、食欲、睡眠欲である。

種類
生物的要求飢えや乾き、性など
心理的要求自律性、有能感、関係性など
社会的要求達成、親和、権力
上渕(2018)を参考に筆者作成

次に、欲求(desire, wants, striving)である。要求と混同されることが多い。と言うのも、心理的・社会的要求を欲求とし、生物的要求を欲求と要求を区別する立場がある一方、同一視する見方もあるからだ。次に、選好である。これは、あるものを別のものより好んで選ぶことである。個々人の選好は複数の選択肢の間の順序付けとして捉えられる。最後に、態度である。態度はきっかけさえあれば、具体的な行動に結びつく要因である。行動の例としては、政策の浸透のために積極的に発言する、あるいは反対運動するなどが考えられる。

認知系の動機は、次の表のようになる。

種類内容
価値行動結果への主観的価値づけ
目標そうなって欲しい事柄または、そうなってほしくない事柄
期待行動結果が望ましいことになるかの予測、あるいはその逆
信念安定的な期待や価値観、思い込みを指す。期待は一時的な予測を指すので、信念と必ずしも同一ではない。
上渕(2018)を参考に筆者作成

まとめると動機は実体ではなく、仮定される潜在的能力を行動や心理プロセスとして実行するため必要なプロセスを仮にそう呼んでいるに過ぎないもののことである。

【参考文献等】

主要参考文献

上淵寿. (2012a). 動機づけとはなにか: キーワード動機づけ心理学 (pp. 4-5). 金子書房.

上淵. (2018). 新動機づけ研究の最前線. 北大路書房.

<文=末田椋資>

当ライターの前の記事はこちら:自己決定理論とは?

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