目次
- スマホが欠かせない時代
- ナッジを作る
- 問題を意識しているか?
- 問題を意識している場合 ~罰則・公言~
- 問題を意識していない場合 ~デフォルト設定・損失回避・社会規範~
- ナッジのチェックリスト
1.スマホが欠かせない時代
総務省が令和3年度に行った調査によると、平日の主なメディアの平均利用時間は、全年代でテレビ(リアルタイム)視聴が2時間26分、ネット視聴時間が2時間56.8分となっている。特に、20代はテレビが1時間11,2分、ネットが4時間35分費やしていることが明らかになった。メディアは誰の目から見ても私達の生活、特に若い世代にとって必要不可欠なものとなっている。しかし、過度の使用は睡眠不足や仕事への悪影響など数えきれないほどのリスクを伴っている。本稿では、行動経済学の観点からSNS依存を断つためにどのような手順を踏むべきか、具体例を交えながら検討する。
2.ナッジを作る
まず、行動経済学のナッジという考え方を理解する必要がある。ナッジ(nudge)とは、注意を促すためにそっと肘を突くことを意味する。ノーベル経済学賞受賞者のリチャード・セイラ―は、ナッジを「選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味する」と定義している。つまり、選択の自由を確保しつつ、金銭的なインセンティブも使わずに行動変容を促すことを行動経済学的観点からのナッジとしている。
3.問題を意識しているか?
次に、検討するべきことは、対象とする問題を意識しているか、意識していないかである。例えば、SNSの場合、自身はSNS依存であることを認識しているにも関わらずSNSを使ってしまう場合と、無意識にSNSを使っている場合では、有効となる対応方法も変わってくる。
4.問題を意識している場合 ~罰則・公言~
問題を意識している場合、なんらかの要因でSNSを用いている可能性がある。例えば、海外の取引先との連絡でFacebookを用いる必要があり、ついつい他の投稿に目が行ってしまい時間を浪費してしまうことが考えられる。他にもSNSアプリを消すことということに踏み切っても、「あのインフルエンサーの投稿だけ」と思い、再びログインするというひと手間をかけてまでも利用しようとするなど、様々な要因が絡むことがある。このような場合は、本人の自制心の不足が原因となることが多い。これに対処するためには、コミットメント手段を活用することが有効である。例えば、決められた時間以上SNSを使ってしまう毎に腕立てを30回を自身に課す、SNSを過度に使わないことを公言する、毎日のSNS使用時間をフォロワーに報告し、取り組みに緊張感を持たせることが、問題の解決・縮小に貢献すると考えられる。
5.問題を意識していない場合 ~デフォルト設定・損失回避・社会規範~
問題を意識していない場合は、デフォルト設定が有効となる。デフォルトとは初期設定を意味し、例えば、毎日のSNS時間に時間制限を設け、時間が来ると、時間制限という画面が表示されることによって、SNSを続けるインセンティブを減らすことが可能となる。他にも、損失回避に訴えるという方法がある。例えば、SNSの過度な使用は視力の低下を引き起こす、良質な睡眠を妨げるというような事実を自室の壁に貼ることで、スマホを過度に使用することによる損失を回避しようとスマホの使用時間を抑制するインセンティブが働くようになる。また、社会規範に訴える方法もある。例えば、平均SNS使用時間を大幅に超えている人であれば、SNS平均時間を提示し、まずは平均まで使用時間を落とそうと促すことで、同調を志向する心理が働く。
6.ナッジのチェックリスト
最後に、ナッジを設計した場合のチェックリストの代表例を紹介する。ナッジという名称を提唱した冒頭言及したリチャード・セイラ―とサンスティーンは、「Nudges」というチェックリストを提案している。リストは次の6項目からなる。
- インセンティブ(iNcentive)
- マッピングを理解する(Understand mapping)
- デフォルト(Defaults)
- フィードバックを与える(Give feedback)
- エラーを予期する(Expect error)
- 複雑な選択を体系化する(Structure complex choices)
ナッジを設計するには第一に、対象がどのようなインセンティブを持っているか理解することが必要である。特定の行動をとりたいと思っているのにできないのか、もともと思っていないのかを識別することが重要である。第二に、意思決定プロセスをマッピング化し、意思決定のどこに支障となるものがあって、望ましい行動がとれないのかを明らかにする。第三に、望ましい行動をデフォルトの選択として設計できるか検討する。第四に、本人が取った行動の結果をフィードバックできれば行動の結果を報酬として認知でき、学習や習慣形成に繋がる。第五に、エラーを予測することでそれを事前に回避、起こってしまっても最小限化することが可能となる。第六に、複雑な選択を体系化することで、複雑に考えなくても望ましい選択ができるようになる。
【主要参考文献】
大竹文雄 (2019)『行動経済学の使い方』 岩波新書.
総務省令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書,総務省情報通信政策研究所
https://www.soumu.go.jp/main_content/000831290.pdf (2022年10月28日最終閲覧)
<文=末田椋資>
当ライターの前の記事はこちら:就学前教育の可能性
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